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女性とアーユルヴェーダ
VOL.006 アーユルヴェーダと消化力

2018.10.29

VOL.006 アーユルヴェーダと消化力


暑くなってくると、食欲が出ない、元気が出ない、胃腸の調子が何となく悪いという人も多いのではないでしょうか。今回は、私たちの身体に備わった機能「消化」について、消化とは何か、なぜ消化が大切なのかを解説して頂きました。

 

変わり続ける環境と変わらない身体

私たち人類はこれまで、太陽や月や星のリズムと調和しながら自然とともに生き延びてきました。そして今日まで、人間の身体の仕組みは変わらず脈々と受け継がれています。

しかし、現代社会では、身体が環境に適応できず混乱し、さまざまな不調を引き起こしてしています。

例えば、夏に冷房によって身体が冷え切ってしまうことがありますが、身体は夏のリズムなので身体の熱を発散させようと働いています。このとき、身体が冷えるからといってつい真冬のように熱い飲みものや熱い食事を摂ってしまうのですが、実際は熱を冷まそうとしている身体の働きに対して熱を加えるという真逆のことをしてしまっているのです。

このような不自然な環境・習慣の中に身を置き続けていると、身体は処理能力の限界を超え、体調不良から病気になってしまう可能性があります。

 

そもそも「消化」とは何なのか

人間は、食事によって身体を養っています。しかし、口から入れた食べ物がそのまま手や足や身体になったり、排泄されるわけではありません。私たちには消化という素晴らしい仕組みが備わっているので、食べ物を血液や筋肉に変化させたり、要らないものは形を変えて排泄したりすることができるのです。

アーユルヴェーダでは、消化は身体の中の火(アグニ)の働きであると考えます。たとえば紙に火をつけると灰になるように火には「変化させる力」があります。見えない体内の働きをそのまま捉えるこの感覚は、「人は自然そのものであること」が大前提にある伝統医学ならではの視点だと思います。

現代の私たちは、「空腹でもないのに食べる」「間食をする」「不規則な時間に食事をする」、「冷たい飲み物を飲みながら食べる」などの不自然な習慣によって消化活動が十分にできず火(アグニ)を消火する食生活をしてしまっています。

「食べて元気を出す」というのももちろん間違ってはいませんが、「食べ過ぎて元気が出ない」ということも十分ありうるのです。江戸時代の医師であり儒学者である貝原益軒の著した『養生訓』という本には、まさに「アーユルヴェーダの養生法・日本版」といえる内容が書かれていますが、他の国の人々に比べて特に「消化力の弱い=火が弱い」日本人は食べ過ぎによる病になりやすいことを繰り返し注意しています。

 

食べ物が毒になる

人間は生き残るために身体を守るシステムが備わっており、体内へ入り込んできた毒物を解毒したり、速やかに排出する能力があります。

今、スーパーには季節を問わず野菜が並び、世界各国の色々な食べ物が簡単に手に入ります。食品添加物や薬品や農薬など自然界には存在しないものをふんだんに使った食べ物も避けることのほうが難しいです。身体としては「冬なのになぜ夏の食べ物が入ってきたんだろう?」などと混乱します。それでもどうにか消化しようとするのですが、日々の摂取によって身体の消化力を上回ると、身体中に毒素が溜まってしまいます。

身体が消化しきれないものは未消化物(アーマ)といい、体内に蓄積すると栄養素や酸素、老廃物などの物流システムである血液・リンパ系や、内臓や身体の動きなどを管理・伝達する情報システムである神経系などの流れを滞らせてしまいます。その結果、新しい細胞を生み出す際に「必要な物資が届かない」「指令が届かない」などの混乱を引き起こし、不完全な細胞が生まれてしまいます。通常ならば不完全な細胞は身体に害を起こす前に免疫システムによって消去されますが、この免疫システムを超えたエラーを繰り返すことで病気となってしまうのです。

 

「心」も消化不良を起こす

昔の日本人は、農薬を使わず健康的な土壌で育った生命力溢れる旬の野菜に、酵母の力を生かして仕込まれた味噌や醤油を使った一汁一菜の食事に時々魚や肉が加わるという、消化力に見合ったシンプルかつオーガニックな食生活を送っていました。

だからこそ、たくさんの子供を産み育てながらも水汲みや火おこし、洗濯まですべて手作業で一日中働いていても元気に豊かに暮らすことができたのでしょう。

そう考えると、消化力の弱い私たち日本人が現代を生き抜くためには食生活に、より気を配る必要があるのです。

さらに「心」も消化不良を起こすことがあります。例えば、起こった出来事に対して納得できないときに「腑に落ちない」という日本語を使います。この「腑」は「五臓六腑」の腑であり「中が空洞になっている臓器」のことで消化器官を言い現わしています。ですから「腑」に「落ちない」ということは、「消化不良の状態」なのです。しかし、その「腑に落ちない」出来事から何かを学ぶ・得ることができれば「腑に落ちる」つまり消化されるのです。

その「腑」がある「腹」には、昔から特別な意味がありました。「腹が立つ」「腹を割って話す」また「切腹」をして腹黒いものは何もないと身の潔白を証明するなど、感情や心の内と「腹」の繋がりは当然のことでした。

 

溜まったものを処理して消化力を向上させる

その「腹」の状態は、身体だけでなく心にも大きく影響します。

アーユルヴェーダには、「腹」に溜まった未消化物(アーマ)の消化を促したり排出させる方法がたくさんあります。

体内や心に未消化物(アーマ)があまりに多く溜まってしまった場合は、アーユルヴェーダの導きに従って、消化力を高めて体外に毒素を排出しましょう。

そうすると、消化力を取戻すことで心身が軽やかになり、より充実した人生を送ることができるのです。

次回は、「アーユルヴェーダで高める消化力と生命力」です。 

プロフィール

小川ゆり Ten治療院院長

2006年、名古屋鍼灸学校卒業。はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師免許取得後、市内の治療院にて勤務。渡印し、インドのアーユルヴェーダクリニックにて研修を受ける。帰国後、Ten治療院院長。

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