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女性とアーユルヴェーダ
VOL.005 アーユルヴェーダと脳の世界

2018.10.29

VOL.005 アーユルヴェーダと脳の世界


私たちの感情や記憶を司っている、未だ謎多き臓器、脳。アーユルヴェーダの観点では「脳」はどう捉えられているのでしょうか。鍼灸師あん摩マッサージ師、アーユルヴェーダセラピストの小川ゆり先生に教えていただきました。

 

脳は情報をキャッチするアンテナである

ここ20年の間でコンピューター技術は、驚くほど進化しました。それに伴い、人々は自分の身体ではなく、スマートフォンの充電をこまめに気遣い、携帯やパソコンなしでは生きられない生活が浸透してします。さらには人間の新たな「脳」として「人工知能」の研究が盛んに進んでいます。例えば私たちが日常で触れているインターネットの検索機能は、世界中の膨大な検索ワードの情報から私たちがどんな情報が欲しいのかを人工知能が「学習」し続けて、相手が欲しいと予測される情報を瞬時に選択して検索結果を表示しています。もはや、私たちは人工知能に誘導されコントロールされている有様です。しかし、どんなに優秀な人工知能でも、電源と繋がっていなければ機能しません。電源がなければ動かないコンピューターに依存しすぎ、さらには自分の脳の代わりを任せ過ぎていることはあまり良い状況とはいえません。

一方、私たち自身は、どこからどのように、電源を得て、動き、考え、生きているのでしょうか? アーユルヴェーダでは、「人は宇宙という電源からエネルギーという電気を供給してもらうことで、生かされている」と説かれています。宇宙のエネルギーは無限です。その宇宙からエネルギーを取り込むコンセントとなるのが、今回のテーマである「脳」なのです。

 

シロダラーの効果の深い意味

アーユルヴェーダといえば、額からオイルを垂らすシロダラーの光景を思い浮かべる方が多いと思います。シロダラーとは、心地よい温度に温めた100%天然のオイルや薬草を煮出したハーブ液を、20~30分間額にゆっくりと垂らすことで、脳に深いリラクゼーションを促し、睡眠状態へと誘うアーユルヴェーダの施術法の一部です。

最近、オーストラリアの研究者によって、「脳の老廃物は睡眠中に排出される」という研究結果が発表されました。アルツハイマーやパーキンソン病などは、脳細胞から排出される特定の老廃物がうまく排出されずに、脳内に残ったまま正常な脳細胞を犯すことで脳の機能を低下させます。このような脳の機能を低下させる要因を具体的に処置するのが、アーユルヴェーダにおけるシロダラーです。インドやスリランカでのアーユルヴェーダ治療では、これらの病気に対してシロダラーが処方されています。この研究を通して、オイルやハーブ液の成分を頭皮から脳へと浸透させながら睡眠状態へと導き、同時に脳のデトックスを促すアプローチが行われている意味が裏付けられ、私は深く納得しました。

また、最近では、故スティーブ・ジョブズの影響で禅の再評価や、マインドフルネスの流行によって「瞑想」が見直されつつあります。瞑想状態の脳は、「今、ここ」一点に意識することによって、過去や未来に対する恐怖や焦りや不安といった感情から解放されていきます。シロダラーは額を流れるオイルの心地良さに意識が集中されることで、脳を瞑想状態へと導き安らぎや満ち足りた気持ちを感じることができます。瞑想やシロダラーで脳を浄化させる方法を使ったアーユルヴェーダの智慧の深さが、だんだんと解明されてきています。

 

脳細胞を新しく作るハーブ&スパイス

和食であまり馴染みがありませんが、インドやスリランカなどの食事には、ハーブやスパイスなどがふんだんに使われています。アーユルヴェーダが定着している国々ではハーブやスパイスを欠かすことは出来ません。

脳に関わるハーブやスパイスの研究で、次のような興味深いものがあります。

「人間は細胞を新たに再生して産み出す細胞である幹細胞の働きと、寿命を終えた細胞の排出によって、37兆2000億個ある身体の細胞を維持しています。その幹細胞に、バジル、コリアンダー、オレガノ、カモミールなどのハーブや赤唐辛子などのスパイスに多く含まれるアピゲニンという成分を加えると、幹細胞が記憶力や学習能力の高い新たな脳細胞へと変化することがわかった」というものです。

アーユルヴェーダは、食だけでなくハーブやスパイスの持つ大自然の力を凝縮したオイルやエキスを使い、シロダラーやアビヤンガオイルマッサージなどによって皮膚からもその力を取り入れる療法です。人のエネルギーの修正は、大自然という宇宙の調和から生まれてきたもので補うという法則に貫通していることが、アーユルヴェーダの世界の素晴らしさだと思います。このことからも古代から継承され続けてきたアーユルヴェーダの理論が、現代科学によってようやく証明されはじめていることがわかります。

 

アーユルヴェーダの必要性

今の日本は4人に1人が65歳以上の高齢者、2025年には高齢者の5人に1人が認知症となると言われています。現代では20代後半から40代前半という早い段階で「若年性認知症」となるケースも増えていて、このままではいけないと国を挙げて対策を練っているほどの深刻な状況です。いくら身体が自由に動いても、脳が不自由であれば本人だけでなく周囲の人々も辛い思いをすることになります。身体機能の司令塔である脳の働きは、手足や内臓の働きにも影響を与えていくのです。

さらに、心の状態は脳の働きに直結しているため、心のストレスが蓄積すると脳の機能低下から認知症へと進む可能性が高くなります。私の治療院では身体のメンテナンスと共に、将来の認知症を予防するためにも「心と脳を癒すメンテナンス」も呼び掛けています。脳の浄化、シロダラーに加え、アーユルヴェーダに基づくヘッドマッサージや脳機能を高める頭皮鍼による鍼治療、顔から脳へ刺激を与えるフェイスマッサージなど、アーユルヴェーダの智慧と鍼灸治療を融合させて、認知症対策にも万全な体制を整えています。

皆さんも、自身の「充電」のために、アーユルヴェーダで心身、そして脳のメンテナンスを行ってみてはいかがでしょうか。

次回は、アーユルヴェーダで説く消化力の大切さについてお届けします

 

参考文献

Eva Bianconi, et al; “An estimation of the number of cells in the human body.” Annals of Human Biology, Nov-Dec2013, Vol. 40, No.6, p.463-471

Maiken Nedergaard;“Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain.” Science,18 Oct 2013, Vol.342, Issue 6156, p.373-377

Stevens Rehen; “Commitment of human pluripotent stem cells to a neural lineage is induced by the pro-estrogenic flavonoid apigenin.”doi: http://dx.doi.org/10.3402/arb.v2.29244, published online, 10 Dec2015

プロフィール

小川ゆり Ten治療院院長

2006年、名古屋鍼灸学校卒業。はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師免許取得後、市内の治療院にて勤務。渡印し、インドのアーユルヴェーダクリニックにて研修を受ける。帰国後、Ten治療院院長。

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