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女性とアーユルヴェーダ #4アーユルヴェーダによるデトックスと心の変化
2018.10.03

アーユルヴェーダによるデトックスと心の変化


最近、健康や美容の分野で、「デトックス」と言う言葉をよく耳にするようになりました。「体内に溜まった毒物を排出して浄化する」という意味のこの言葉ですが、アーユルヴェーダには古来より、身体を浄化することで心の変化を促すデトックス法があります。今回は、Ten治療院の小川ゆり先生にアーユルヴェーダの得意とするデトックス法を日本の「古事記」からの視点を交えて伺いました。

インド伝承医学であるアーユルヴェーダでは、心身が穢れなく澄みきっている状態を「健康」と考えます。そのため、穢れを浄化させるための浄化・デトックス療法がいくつかあり、治療や養生の方法として重視されています。

この「穢れを浄化する」という考え方は、実はインドだけでなく日本でも古くから根づいているのです。

まずはデトックスの概念を、日本最古の歴史書である「古事記」から紐解いてみましょう。

 

日本神話の神様もデトックスをしていた

古事記には、日本の国土、そして神々を産み出したとされる男神・伊弉諾尊(イザナギノミコト)と女神・伊弉丹尊(イザナミノミコト)の物語があります。

そこには、「禊」・デトックスについて、次のような大変興味深い記述があります(以下、要約)。

伊弉諾尊(イザナギノミコト)は、出産の際に命を落とした妻・伊弉丹尊(イザナミノミコト)に逢いたい気持ちを抑えることができずに黄泉の国という死者の世界へと出向き、「決して覗いてはいけない」と言われた妻の姿を覗き見てしまいました。

そこで伊弉諾尊(イザナギノミコト)が目にしたのは、美しかった生前の面影はなく肉体が朽ち、変わり果てた妻の姿でした。その、受け入れ難い姿を見てしまったことで伊弉諾尊(イザナギノミコト)は穢れてしまうのです。

伊弉諾尊(イザナギノミコト)は、自分の穢れを浄化するために禊を行い始めました。

伊弉諾尊が、まず身につけていたものを投げ捨てたその衣服や冠などからは12柱の神様が生まれ、裸になり身体を洗った際には16柱の神様が生まれ、妻の無残な姿を見てしまった左目を洗った際には天照大御神(アマテラスオオミカミ)が、右目を洗った際には月読命(ツクヨミノミコト)が、強烈な死臭を嗅いだ鼻を洗われた時には須佐之男命(スサノオノミコト)が生まれました。

興味深いことに、日本の神々は、伊弉諾尊(イザナギノミコト)が穢れてしまった自身を「禊」という浄化の行為によって誕生したと記されています。

また、神道の宗教観でも、人間の死を穢れたものとして忌み嫌い、塩で穢れを払う風習があります。古代から日本でも「穢れを浄化させる」ことを重んじてきたようです。

伊弉諾尊と、その妻、伊弉丹尊の像

 

デトックスの意義

伊弉諾尊(イザナギノミコト)は、覗いてはいけないと忠告を受けていたにもかかわらず、妻に逢いたいという欲望に負けて覗いてしまったことで穢れてしまいました。

この描写を、現代の私たちに当てはめて考えてみましょう。

たとえば、「身体によくない」「ダイエットの大敵」とわかっているけれど、甘いものの誘惑に負けて食べてしまう、そんなことはありませんか。

アーユルヴェーダでは、いけないと分かっている知性がありながらも、欲望のままに行ってしまう(知性で欲望をコントロールできない)ことを「知性の過ち(プラギャパラーダ)」といいます。

自分で最良の選択ができる知性を保つには、どうしたらいいのでしょうか? その答えが、アーユルヴェーダにおける心身のデトックスに隠されています。

 

アーユルヴェーダのデトックス法で感覚器官を浄化する

現代では、デトックスという言葉をよく耳にしますが、アーユルヴェーダの世界では数千年も以前から既に、心身のデトックス法として「感覚器官を浄化させる」方法が確立されていました。

なぜ感覚器官の浄化がデトックスと繋がるのでしょうか。

私たちは普段、においを嗅いだり、景色を見たり、五感を感じる感覚器官を通して自分以外の世界からの情報をキャッチしています。

目や耳などからの情報に対して、心がどう反応するかは人それぞれです。

例えば、部屋を掃除せずに散らかったままでも平気な人もいれば、片づけなくては気が済まない人もいます。道路の騒音が気になる人もいれば、都会暮らしに慣れてしまい何とも思わず当たり前になっている人もいます。

しかし、普段は五感からの情報が気にならない人も、実は心や魂のレベルでは不快さを感じていて、心の反応を素直に受け取ることができていないのかもしれません。そのような状態に気付くためにも、外の世界と常に接している、感覚器官をまず浄化させることの手段はとても有効的なのです。

アーユルヴェーダでは各感覚器官を、下記のようにオイルによってデトックスします。

○触覚【皮膚】アビヤンガ
これまでの連載でも解説してきたオイルを使った全身マッサージです。人体最大の感覚器官である皮膚を浄化します。

○嗅覚【鼻】ナスヤ
オイルによる点鼻浄化療法です。

○視覚【目】ネトラタルパナ
目の周りに土手を作ってオイルを流し込み、目を浸します。

○聴覚【耳】カルナプラナ
耳に直接オイルを注ぎ込みます。

○味覚【口】オイルプリング
オイルを口に含みうがいをします。

 

専用の器具を使って行う、オイルによる鼻うがい点鼻浄化療法

 

感覚器官の浄化は心のデトックスに直結する

私の治療院では、鍼灸治療にアーユルヴェーダの理論を取り入れたデトックスへの取り組みでさまざまな症状への改善へと導いています。

患者さんへのカウンセリングでは、これまでの生活習慣や食事なども必ず伺うことで、日々の習慣や「わかっているけどついつい……」という、プラギャパラーダが繰り返されている部分を把握しながら不調の原因がどこにあるかを、まずは、カウンセリングで掴んでいきます。

また患者さん自身も、なぜそのような不調を巻き起こしていったのか? と、それまでの生活習慣や思い癖を見つめることで、自分のプラギャパラーダに気づいて頂いた上で、デトックスプログラムへと進んで頂きます。

このデトックスプログラムでは施術以外に、プラギャパラーダを繰り返さないための対処方法として、個々の体質に合った正しい食事方法や生活習慣など、アーユルヴェーダの智慧をマンツーマンで学んでいただくことも施術の範囲に含まれております。

アーユルヴェーダは身体・心・魂までの範囲を含めた世界です。

身体と心を切り離さない視点を持った施術の在り方は、さまざまな症状が改善されていくと共に、心の状態も明るく前向きに変化していきます。心身の浄化が進むほどそれを深く実感していくことができます。

アーユルヴェーダとは、WHO(世界保健機構)でも認められている予防医学であります。

医学的な施しとは、人に及ぼす影響も大きいために慎重を要します。目的がデトックスであっても身体の機能に熟知した施術者による正しい判断と適切な施術が行われることが大切です。

病気や気になる症状がある場合は、その旨を伝えてお身体を安心して預けられる場所での治療をお勧めします。

次回は「アーユルヴェーダと脳の世界」についてお届けします。

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味覚をデトックスする、オイルプリングはこちらの書籍でも学べます。

著者 : ブルース・ファイフ
監訳 : 白澤卓二
仕様 : 四六判 348頁
発行年月 : 2014/10/31
定価 本体1,800円+税

プロフィール

小川ゆり Ten治療院院長

2006年、名古屋鍼灸学校卒業。はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師免許取得後、市内の治療院にて勤務。渡印し、インドのアーユルヴェーダクリニックにて研修を受ける。帰国後、Ten治療院院長。

Ten治療院