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スポーツカイロプラクター“Dr.S”が解説する 機能解剖から考える疾患別治療ノート【第5回】梨状筋症候群(Piriformis syndrome)
2018.06.12

【第5回】梨状筋症候群(Piriformis syndrome)

by榊原直樹(DC, DACBSP, PhD)


梨状筋起因の坐骨神経痛は、1928年にYeomanによって初めて提唱されました。当時、彼はこの疾患を「仙腸関節周囲炎」と表現していました。梨状筋症候群という疾患名はRobinsonによって初めて使われました(D.R. Robinson 1947; https://goo.gl/cMtZqf)。

梨状筋の直下には坐骨神経が走行しています(図1)。梨状筋症候群では、梨状筋によって坐骨神経が刺激(物理的または生理学的)されることで、殿部痛や下肢痛(坐骨神経痛)が現れます。

梨状筋症候群は稀な疾患です。複数のリサーチによると梨状筋に起因する坐骨神経痛は、全体の0.33~6%に過ぎません(J.W. ThomasByrd 2004; https://goo.gl/oSg1hQ)。しかし、腰椎周辺以外に起因する坐骨神経痛では、比較的好発する症状です。

1 梨状筋と坐骨神経の解剖学的位置関係

梨状筋の直下を坐骨神経が下行

 

症状

患者は殿部痛や下肢痛(坐骨神経痛)を訴えます。殿部痛は長時間の同じ姿勢(特に座位)や歩行などで増悪します。下肢痛は大腿後面から外側面にかけての痺れや感覚鈍麻が現れますが、比較的稀な症状です。また、大坐骨孔の痛み(圧痛も含む)も特徴的な症状の一つです。また梨状筋症候群による坐骨神経痛の場合、知覚異常領域が膝関節よりも近位に留まっていることが多いです。

梨状筋症候群の3つの症状
1.殿部痛
2.長時間の座位で症状増悪
3.大坐骨孔の痛み

 

原因

梨状筋症候群は一次性(プライマリ)と二次性(セカンダリ)に分類されます。一次性梨状筋症候群は、解剖学的(構造的、器質的)な問題が原因になります。具体的には、梨状筋の近辺における坐骨神経のバリエーションが原因となっている梨状筋症候群のことです(図2)。坐骨神経のバリエーションは、1937年にBeatonとAnsonによって6つのパターンが示されました(L.E. Beaton, B.J. Anson 1937; https://goo.gl/hzcZnA)。タイプⅠとⅡでおよそ90%を占めています(M. Trotter 1932; https://goo.gl/wempvq)。

一方、二次性梨状筋症候群は、マクロトラウマ(殿部から転倒など)もしくはマイクロトラウマ(長時間の座位など)によって梨状筋に炎症や線維化が生じ、坐骨神経に影響(物理的・生理学的)を及ぼすことで症状が現れます。梨状筋症候群全体の85%以上が二次性梨状筋症候群に該当します(E.C. Papadopoulos, S.N. Khan, 2004; https://goo.gl/4vYyyG)。

タイプⅠ(70%

タイプⅡ(19.6%

タイプⅢ(4.2%

 

タイプⅣ(1.8%

タイプⅤ(1.5%

 

タイプⅥ(2.5%

2 梨状筋の近辺における坐骨神経のバリエーション

 

検査

梨状筋症候群では、梨状筋の下で坐骨神経が圧迫されていることに起因しています。したがって検査では梨状筋を他動的に伸張位にしたとき、もしくは自動的に収縮を起こさせたとき(アイソメトリック)に坐骨神経への圧迫が増加し、痛み(殿部痛、下肢痛)が現れます。ただし梨状筋を自動的に収縮させた時の方が陽性反応が現れやすいと言われています(R.A. Beatty 1994; https://goo.gl/3t32Fw )。以下は代表的な検査法です(表1)。

検査名

検査法

陽性

ペーステスト(Pace test

患者を座位(または腹臥位)にして、股関節の外転+外旋へ抵抗。

痛み、筋力低下

ラセーグ兆候(Lasegue’s sign

患者を背臥位にして、膝関節完全伸展位のまま股関節を90°に屈曲。

痛み(殿部痛、下肢痛)

フライバーグサイン(Freiberg sign

患者を背臥位(または側臥位)にして、股関節の内旋+内転。

痛み(殿部痛、下肢痛)

表1 梨状筋症候群の整形外科的テスト

触診検査では、梨状筋の圧痛が触診されます。圧痛は特に大坐骨孔において顕著です。患者を側臥位(検査側が上)にし、股関節を屈曲位+内転位+内旋位の状態で大坐骨孔を触診すると圧痛が現れやすいです。梨状筋と坐骨神経の触診について解説動画がありますので、そちらを参照してください。

また梨状筋の拘縮により仙骨に捻れが生じる可能性があります。仙骨の運動軸を考慮すると、同側のS4(仙骨尖)が後方、反対側のS2(仙骨底)が前方に変位します(図3)。

 

図3 梨状筋と仙骨の変位

左梨状筋の拘縮により右S2前方変位、左S4後方変位が生じる

 

治療

マクロトラウマによって梨状筋の炎症反応が強い場合、休息やアイシングなどで症状が軽減するのを待ちます。一方、マイクロトラウマでは、梨状筋周辺の線維化が起こっている可能性があります。したがって線維化に伴う組織の癒着の除去が治療法になります。またこの場合、虚血も生じているため冷やさないようにします。

ホームエクササイズでは、梨状筋のストレッチを行ってもらいます。背臥位において股関節の屈曲+内転+内旋により梨状筋はストレッチされます。最大ストレッチポジションにおいて30秒から1分程度維持します。ただしこのとき、下肢痛(坐骨神経痛)が現れた場合は中止します。

 

プロフィール

榊原直樹

ドクターオブカイロプラクティック、スポーツカイロプラクティックフィジシャン、医学博士(スポーツ医学)

1992年 東北大学卒業(動物遺伝育種学)
1997年 クリーブランドカイロプラクティックカレッジ卒業
2006年 冬季オリンピック帯同ドクター(イタリア、トリノ)
2009年 ワールドゲームズ帯同ドクター(台湾、高雄)
2011年、12年 世界パワーリフティング選手権大会日本代表チームドクター(チェコ、プエルトリコ)
2015年 岐阜大学大学院医学系研究科非常勤講師
2009年より名古屋にて『スポーツ医学&カイロプラクティック研究所』所長(http://sportsdoc.jp/)。また2017年よりスポーツ徒手医学協会会長(http://jamsm.org/)も務める。