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Massage Today第23回 マッサージ師にも多い母指関節障害の治療
2017.11.24


By Ben Benjamin, PhD

訳:医道の日本社編集部

Reprinted with permission from Vol.17, Issue 11(November, 2017)of Massage Today.

Massage Today Vol.17, Issue 11(November, 2017)より許諾を受けて、M.L. Benjamin氏の記事を転載しています。Massage Today公式サイトもご参照ください。www.massagetoday.com

一般的に母指の関節障害は症状が軽い場合は、母指を休ませてから、軽いストレッチで可動域を回復し、徐々に筋力の強化をするのが効果的である。しかし、激しい痛みや、持続性のある痛みを伴う場合は、注射療法を治療の第一選択とする。日常の生活が絶えず制限され、しばしば痛みを伴うなら、その障害はかなり重篤であると考えてよい。関節に炎症が生じた状態をそのまま放置すると、時間とともにその整合性が破壊されてしまう。よって早期の治療が何よりも重要である。

 

ストレッチとストレングス・エクササイズ

軽度の症例で、患者の母指と手指に対して行う必須の治療が2つある。1つは、Aaron Mattes氏が考案したアクティブ・アイソレーテッド・ストレッチ (AIS) テクニック。もう1つは、短縮性収縮と伸張性収縮を利用したストレングス・エクササイズである。これらのテクニックは効果的な治癒と、組織の再配置に必須である。

完治を目指し、再発を防ぐためにも、患者にこれらのテクニックを継続してもらう必要がある。患者には、以下のストレッチを定期的に行ってもらい、施術者は患者自身で行える方法を教える。患者がその効果を感じ始めた際には、ストレングス強化の要素を加えていく。

AISを行うには、まず患者にできる限り、母指を自動で伸展してもらう。さらに施術者が引き継いで、2秒間、やさしくストレッチしていく。AISによるストレッチは前回の記事で書いた検査手順に似ているが、行う方法は異なる。

AISでは、施術者はゆっくりとストレッチをして、痛みが生じる前に止める。これを4、5回繰り返す。検査では、不快感や痛みが生じるまで動かす。そうすることで、何が起きているか評価している。

それでは、母指の関節で最も傷つきやすい母指近位関節(母指手根中手関節)から始めていこう。

 

母指手根中手(CM)関節の伸展ストレッチ

患者に母指をできる限り伸展してもらう。施術者の中指か示指を、患者のタバコ窩(手背の橈側にできる三角形のくぼみ)に置く。施術者の同側の母指を患者の母指中手基節間(MP)関節の掌側に置き、母指手根中手関節をやさしく伸展させる。この際、痛みが生じない可動域を常に保つようにする。

2秒間のストレッチを行った後、患者の母指を開始位置の中間位に戻してもらう。その後再び患者に自動で母指を伸展してもらい、これ以上動かせない状態から、施術者が2秒間ストレッチを行う。この運動を複数回繰り返す。

不快感のない範囲で、ストレッチの角度を1度ずつ増やしていく。難しければ、0.5度でもよい。この工程には時間がかかることがあるので、根気よく行う。この原理は、以下のストレッチすべてに当てはまる。

 

母指手根中手(CM)関節の屈曲ストレッチ

まず、患者に母指の屈曲がどういう動きかを示す。それから患者にできる限り母指を屈曲してもらい、施術者は母指を患者の母指中手基節間関節の背側に置く。施術者の同側の手指で患者の手指の内側(小指側)を包むように把持する。

施術者は母指で、患者の母指を施術者の他の指の方向にやさしく押して、可能な範囲まで屈曲させる。これを2秒間行い、患者に母指を開始位置の中間位に戻してもらう。この一連の運動を数回繰り返す。痛みの生じない範囲で、ストレッチの角度を少しずつ広げる(例えば約0.5cm)。

 

母指中手基節間(MP)関節の伸展ストレッチ

施術者は示指を、患者の母指中手基節間関節の背側に、施術者の母指を母指指節間(IP)関節の掌側に置く。それから、患者に母指を自動で伸展してもらう。患者がそれ以上、自動で動かせなくなった位置から、施術者は関節を他動でさらに伸展させる。

不快感や痛みが生じる前に調整する。最初は、しばらくの間、患者の最大伸展位を確認しておく必要があるかもしれない。患者には、痛みが生じそうなときがあれば、知らせるように頼んでおく。この動作を4、5回繰り返す。

 

母指中手基節間(MP)関節の屈曲ストレッチ

施術者の母指を、患者の母指指節間関節の背側に、施術者の示指を患者の母指手根中手関節の背側に置く。それから、痛みが生じない範囲で、患者の母指を自動で屈曲してもらう。自動で動かせなくなった位置から、施術者がやさしく握り、患者の母指中手基節間関節をさらに屈曲させる。繰り返すが、痛みや不快感が起こる前に止めるようにする。

 

母指指節間関節(IP)の伸展ストレッチ

患者の母指指節間関節の背側を施術者の示指で包み、施術者の母指を患者の母指に置く。患者に母指の遠位部をヒッチハイクするように伸展してもらう。患者がそれ以上、自動で動かせなくなった位置から、施術者は患者の母指指節間関節をやさしく押して、さらに伸展させる。ここでも、痛みが生じないように注意する。

 

指指節間関節(IP)の屈曲ストレッチ

施術者の母指を患者の母指の先端に、施術者の中指または示指を患者の母指の母指中手基節間関節に置く。そして、患者に母指の遠位部を屈曲してもらう。患者がそれ以上、自動で動かせなくなった位置から、患者の母指指節間関節を、さらに屈曲させる。患者が痛みや不快感を生じる前に止めること。

 

母指を強化する

患者が定期的にストレッチを行って、関節の痛みが治まってきたところで、強化の要素を加える。患者に異なる厚さ、強度のゴムバンドを使用して、屈曲と伸展のエクササイズを行ってもらう。ゴムバンドで母指の屈曲と伸展のエクササイズを行うと、他の指もゴムバンドの力に抵抗して屈曲または伸展をする。

 

これは手指を強化する最も安価な方法である。患者が好む場合、いくつかのバイオメカニクス装置がインターネットで簡単に見つかる(例えばXtensor Hand Exerciser、Thumb Helper、Cando Digi-Flex Hand、Finger Exerciser、 Finger Master Hand Strengthener)。

母指の柔軟性に役立つAISテクニックを次の映像で紹介。以下は映像のリンク。

https://vimeo.com/234886078

関節の痛みや障害が重篤であるなら、医師(※)が罹患した関節に少量の抗炎症注射を打って、数日間休んでから、ストレッチと強化エクササイズを始める。

抗炎症注射がうまく作用すれば、関節の炎症を減らし、エクササイズが可能になる。関節の炎症が長引くほど、患者が完全に回復する可能性は低くなる。人々は痛みに慣れてしまい、実際に回復することができないのではとネガティブに考えてしまう。

※医師は手を専門とするか、あるいは手指への注射の経験が豊かである必要がある。手の外科医、理学療法医、スポーツや増殖療法の専門医などがそれに当たる。注射は非常に小さな関節に行うため、精度が重要である。