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【第11回】あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス 威張りん坊体操
2017.10.11


京都・嵐山薬師禅寺住職で鍼灸マッサージ師でもある樺島勝徳氏の考案した、簡素で静かな動きの体操を紹介する本連載。今回は不良姿勢による腰痛の対策として、不随意筋を含む骨盤底筋群および大腿内側を鍛える体操を紹介する。


  腰痛の患者さんには、日頃から屁っ放り(へっぴり)腰の人が多い。その姿勢を正すために、図1の姿勢を試している。逆屁っ放り腰である。膝立ちをして大腿四頭筋の付け根・上前腸骨棘を突き出し、その姿勢のまま膝をわずかに折る。膝の上あたりに負担がかかってくる。膝と大腿四頭筋の弱い人は、膝を折る代わりに胸を張り、顔が上を向いた姿勢をつくってしまう。無意識のうちに、弱い膝をかばっているのだが、むろん本人は気づかない。 zen11-1 この姿勢を「威張りん坊体操」と名付けている。「人は誰でも威張りたがるものだけど、威張るのは身体に任せて、心は和顔愛語をこころがけましょう」というのが、私の坊さんとしての説教である。 この体操の意味を探ってみる。まず、膝立ちのまま肛門括約筋の内部感覚を感じてみる。基本姿勢から徐々に膝を曲げていくと、ある角度から突然、勝手に括約筋が締まるのがわかる。ご存じのように、肛門括約筋には内肛門括約筋と外肛門括約筋がある。内肛門括約筋は腸の延長で自律神経の支配。外肛門括約筋は随意筋だから、手足の筋肉と同様の神経支配。 勝手に括約筋が締まった状態でさらに肛門を締めようすると、肛門はさらに強く締まる。つまり、勝手に(不随意的に)締まるのは、内肛門括約筋。意識で(随意的に)締まるのは外肛門括約筋であると分かる。解剖学では内肛門括約筋は不随意筋だから意思の力ではどうにもならない、と思い込んではいけない。不随意筋でも姿勢によって間接的に働かせることができるのである。 したがって、体操に限らず鍼灸や指圧、整体などで姿勢を変えてしまえば、不随意筋であっても間接的にならば意識的に働かせることもできる。もともと屁っ放り腰は、屁を放(ひ)るための姿勢で、肛門括約筋を緩ませている姿。だから、その逆の腰の構えを定着させればよいということだ。 ネットで肛門括約筋トレーニングを検索しても、外肛門括約筋のトレーニング法しか出ていないようだから、ここはプロの見識と技術を示すよいネタとなる。肛門括約筋は膣や尿道の括約筋と連動しているので、内肛門括約筋が働きやすい姿勢が定着していくと、尿もれも膣の締まりも勃起不全も改善する。 内肛門括約筋が不随意的に締まるのを実感できない人は、風呂場でこの姿勢を試してみるとよい。基本姿勢のままおしっこを垂れ流しながら、徐々に膝を曲げていく。ある角度で、ピタッとおしっこが止まる。だからいやでも分かる。 坊さんとして説教しているときには、肛門だ膣だ勃起だなんて言葉を出すことは憚られるが、ここは医療の専門家向きのサイトだから、安心して書くことができる。 私の道場では、上記の姿勢をしたまま、さらに両踵をくっつける(図2)。こうすると大腿内側に負荷が入ってくるので、もう一段厳しい姿勢となる。いきおい、無意識のうちに膝が立ってくるので、それを注意し、さらにもう一段負荷をかける。両大腿でボールを挟むのである(図3)。ここでも無意識のうちに膝が立ってくるので、それを注意する。さらに厳しい、究極の威張りん坊体操の完成である。この状態で30秒持続する。 zen11-2 zen11-3 実験してみると、究極の威張りん坊体操を行ったあとでは、閉目片足立ちのバランス機能が向上する。したがって、バランス機能低下、尿もれや子宮脱、勃起不全など一連の症状が、大腿内側の筋力低下による姿勢の老化と同時進行しているのが分かる。これを腎虚証の実体と理解してもよい。ただし、虚証の人があまり急激にこの体操を行うと、脳貧血や花粉症の悪化などが起こる。

プロフィール

1949年、福岡市生まれ。1974年、花園大学仏教学科を卒業。1982年、佛眼厚生学校(現・京都仏眼鍼灸理療専門学校)を卒業、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。京都・嵐山薬師禅寺住職。元・花園大学非常勤講師(東洋医学)。著書に『プチうつ 禅セラピー』(禅文化研究所)、『絵を見てできる禅的体操』(法研)など。