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【第7回】あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス 中足骨サポーター
2017.06.06


京都・嵐山薬師禅寺住職で鍼灸マッサージ師でもある樺島勝徳氏の考案した、簡素で静かな動きの体操を紹介する本連載。今回は毎日の体操の補助として、安価な道具で足元から全身を整えるアイデアを紹介する。


 

人は歳とともに足の幅が広くなる。中高年の多くは足囲が3Eや4Eの靴を求める。5本で1組の中足骨はバラけて扁平な足となり、膝は開きO脚でガニ股歩き。骨盤はバラけ、猫背は厚く頚は短く、キュンと天を突いていた頭頂部は崩れて幅広の顔となる。全身の骨格は連動して老化する。骨格と筋肉が加齢によって自身の重さに耐えられなくなるのだ。

だから逆に、中足骨を締めると骨盤が締まり、猫背が引っ込み、顔の表情が締まって、全身が若返るかもしれない。下図のように中足骨の部位をサポーターで軽く締める。1日数時間、軽く締めたままごく普通に生活する。

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これだけである。何の智恵も要らない。感性も努力も要らない。しかもこの方法は腰痛から肩の痛み、五十肩、腕のしびれなど、何にでも効く。偏頭痛に効く場合もある。サポーターは、百円ショップで売られている左右セットの手首用のものがよい。L・M・Sの大きさで売られているのも都合がいい。何にでも効くが、効かなかった場合でも100円の損失で収まるので患者さんに勧めやすい。

どうして効くかは分からないが、極めて自然に効くので、いろいろ実験してみる。効果を確認するために立位で前屈し、腰の柔らかさを調べておき、サポーターを着けた状態で再度調べてみる。すると、ほとんどの人で例外なく改善する。また、大きな鏡の前でバンザイをして実験すると、締めた状態では腕の角度がより高く上がり、改善する。五十肩も腕の角度が改善し、痛みが減る。体幹の左右回転の角度も改善する。小指あたりに落ちていた重心は第1指と踵の中間あたりに移動し、土踏まずの天井、ツボでいえば腎経の然谷あたりに落ちて安定している。

ただし、これらの効果もサポーターを外すとその場で元に戻る。数時間締めた状態で過ごしていると、改善した状態が少し定着するが、次の日には元に戻る。だから、毎日数時間サポーターを着けた状態で生活する。腕のしびれや五十肩、頚腕症候群によい。根性坐骨神経痛にも効くが、残念なことに本格的な治療、改善までは至らない。本格的な治療、改善には、本連載の第3回に紹介した中心軸の筋肉増強が不可欠である。

中足骨を締めて全身の運動系を若返らせるこの方法は、極めてシンプルかつ、深い。しかしどうして私のアタマがこんな高度な手法を思いついたかは、分からない。忽然と湧いてきて、試してみると効いた。私のアタマの中では単純な高校レベルの静力学と単純な形式論理しか働いていない。つまり脳ミソの中では単純な力学モデルを運用している。自分のアタマの中だから、手に取る以上によくわかる。なのに、どうしてこんな手を思いついたのだろうか。

思い当たることが一つあった。それは今から20年以上前、あるソックスメーカーと共同で、機能的ソックスを開発していたときのことである。脾経の陰白を持続的に刺激する目的で、5本指ソックスの親指だけを軽く圧迫するソックスを開発し、サーモグラムを撮ったことがある。

サーモグラムとは、皮膚の温度分布をデジタル化し、それを色の違いで表した画像である。撮影は大阪府工業試験所で行われた。現在では手軽なカメラで撮影可能だが、当時は機械が大がかりで、カメラ全体を液体窒素で冷やしながら行われた。そのときの画像が下図である。左側が圧迫前であり、右側が両下肢の親指を20分圧迫したあとの画像である。

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不鮮明で分かりづらいが、よく見ると、手先の血行が減少して温度が下がっていることが分かる。肩の温度や体幹の中央、上胸部中央の温度は上がっている。全身の気血が体幹寄りに収斂したのだろう。大腿前面の温度が上がり、後面の温度が下がっていることもわかる。これは重心が後ろに移動し、膀胱経が休息し胃経が働き出したと理解できる。

このソックスは実用新案特許も取得したが、履き心地が悪く、試作段階で開発中止。商品化は検討されなかった。当時、中足骨を締めるアイデアには至らなかったから仕方ないが、中足骨を締めてテストをしたならば、同様の結果が出ただろうと思う。中足骨部分を締めるソックスは現在、2000円程度で売られている。効き目は百円ショップのサポーターと変わらない。

プロフィール

1949年、福岡市生まれ。1974年、花園大学仏教学科を卒業。1982年、佛眼厚生学校(現・京都仏眼鍼灸理療専門学校)を卒業、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。京都・嵐山薬師禅寺住職。元・花園大学非常勤講師(東洋医学)。著書に『プチうつ 禅セラピー』(禅文化研究所)、『絵を見てできる禅的体操』(法研)など。