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【第6回】あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス ガマの昼寝
2017.05.09


京都・嵐山薬師禅寺住職で鍼灸マッサージ師でもある樺島勝徳氏の考案した、簡素で静かな動きの体操を紹介する本連載。今回はその見た目とは裏腹に、四肢の陰側経絡を働かせ集中力を高めることのできる方法を紹介する。


  医療としての体操は、基本的に補法の鍼と同じ目的で行う。つまり、気血が十分に流れていない部位を探して、その筋肉を選択的に働かせる。こういう目的の運動は弱い力でゆっくり長く行うほうがよい。 病弱者や高齢者には特にそうだ。こういう人たちの多くは、手足の陰側経絡に沿った筋肉たちが弱っている。今日紹介するポーズは、その筋肉たちを一括して同時に働かせる。太ったおばさまたちがこれを行っている姿から連想して「ガマの昼寝」と名付けた。 写真1のような姿勢で両足裏を合わせて仰臥するのだが、膝は限界まで開いたあと、必ずほんの少し天井のほうに戻す。両腕は必ず床から浮かす。肘は少し曲げておいたほうがいい。ヘソは閉じて腰椎で床を押す。 zen06-gama01 このポーズはヨーガにもあり、写真では区別がつかないが、私の体操の場合は単なるストレッチではない。本来、弱っている筋肉を無理にストレッチしてはいけない。筋線維を傷つけてしまうからである。「ガマの昼寝」の四肢は必ず床から浮かしているので、弱い負荷による等尺性の自動運動となる。私の道場ではこれを4分から5分行っている。 踵の位置を尾骨から遠く離すと脾経が働き、呼吸運動はヘソの位置が動き、中焦の臓器が働きやすくなる。尾骨に近づけると腎経・肝経が働き、呼吸運動はヘソ下が動き、下焦の臓器が働きやすくなる。そういうイメージで行う。 両腕の位置を腰に近づけると腹式呼吸がしやすくなり、脇を90度くらいにしていると、胸式呼吸が出やすくなる。脇の角度やねじれを微妙に変えながらこのポーズで身体を探ると、肺経の中府や心包経の天池などに筋力低下が隠れていることも分かる。肩こりのひどい人や高齢者では、腕を床から浮かすこと自体がかなりつらく、腕の自重に耐えられない。日常生活ではこういう部位に痛みや違和感が出ることは少ないが、このように、陰側部位の筋力低下が肩こりや背中の痛みなどの原因になっている場合も多い。 ヘソを閉じて腰椎で床を押す、という動きは初心者には難しいが、大腰筋や腹横筋など体幹の筋肉の動きなので重要である。私の体操では「ヘソを閉じる」ことは必須不可欠である。 実践するうえで4分から5分は長いので、1分ごとに課題を設定している。最初の1分は成り行きにまかせて行う。このポーズに慣れるためである。次の1分は、腹式呼吸だけを行う。胸郭は動かさない。踵の位置を尾骨に近づけ、両腕の位置を腰に近づけると気海・丹田もよく動く腹式呼吸となる(写真2)。 zen06-gama02 次の1分は、胸式呼吸だけを行い、上焦の臓器である心臓や肺の機能を育てる。腹部は凹んだままで動かさない。踵の位置を尾骨から遠く離し、脇を90度くらい開いて床から浮かす(写真3)。肩こりが進んで肩ボケになっている人では、脇が100度や120度くらいまで開いて、胸式呼吸ではなく肩式呼吸になってしまうから要注意である。肩の動く呼吸は緊急時のみだから、トレーニングの必要はない。肩が動かない胸式呼吸の筋肉をトレーニングする。 zen06-gama03 次の1分は、胸式呼吸と腹式呼吸のどちらか苦手なほうを行う。このとき、呼気10秒、吸気10秒というゆっくりとした呼吸をトレーニングする。個人によって得意な呼吸運動は決まっていて、通常の生活では得意な呼吸ばかりを無意識に行っている。呼吸運動は24時間途切れることがないため、呼吸の偏りが気血の偏りを生み、慢性病の遠因となる。 以上で4分が終わるが、脊柱の柔らかい上級者は、さらに「うねりの呼吸」を1分間行う。「うねりの呼吸」とは健康な幼児が自然に行っている呼吸で、吸気の動きがまずヘソ下から始まる。そのとき、ヘソから鳩尾までは動かない。次にヘソ上が膨らむが、ヘソ下は動かない。次に胸郭が膨らんで吸気過程が終わる。このとき腹部は動かない。呼気もこの順番にしぼんでいく。つまりは土用波のうねりのような大きな呼吸運動で、おそらくはこれが人類本来の呼吸だろう。「ガマの昼寝」5分間が終わったあとは、昼寝から覚めたときのような心地よさである。呼気にねばりと自信が濃くなって、集中力が高まる。 *土用波(どようなみ):大きな台風が南方洋上にあるときに寄せてくる波のうねり。特に夏の土用の頃に見られるので、この名がある。(広辞苑)

プロフィール

1949年、福岡市生まれ。1974年、花園大学仏教学科を卒業。1982年、佛眼厚生学校(現・京都仏眼鍼灸理療専門学校)を卒業、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。京都・嵐山薬師禅寺住職。元・花園大学非常勤講師(東洋医学)。著書に『プチうつ 禅セラピー』(禅文化研究所)、『絵を見てできる禅的体操』(法研)など。