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【第4回】あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス 内臓を育てる微腹圧呼吸
2017.03.17


京都・嵐山薬師禅寺住職で鍼灸マッサージ師でもある樺島勝徳氏の考案した、簡素で静かな動きの体操を紹介する本連載。今回は「腹のできた人物」の土台となる、内臓機能を充実させる呼吸法を紹介する。


 

人は寝たきりでも生きていける。運動系がダメになっても内臓系が生きていれば死ぬことはない。だから「はらわたファースト」である。「はらわた」を漢字にすると「腸」だが、「腸」では大腸、小腸を連想するから、ここでは内臓全般の意味で「はらわた」という。はらわたの丈夫な人はたくさん食べてたくさん働き、たくさん稼いで豊かな人生を送る。病気になっても回復が早い。

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五臓六腑の図(寺島良安『和漢三才図会』より)

 

私は0歳からのぜんそく持ちだった。食べすぎると発作が起こり、働きすぎると体調が低下して回復しない。無論、貧乏な人生を歩んできた。はらわたを丈夫にすることは切実な課題であった。いろいろと試行錯誤をしたが、やっと行き着いた方法は、腸内細菌の変革と内臓血行の改善である。はらわたを育て鍛え始めてほぼ10年、50歳の頃、やっと0歳からのぜんそくを完全に克服した。

腸内細菌の変革は自作発酵サプリメントの服用で実現したが、詳細はここでは省略する。内臓血行の改善は「微腹圧呼吸」で実現した。内臓の血行が改善すれば内臓は丈夫に育つ。ぜんそく発作が起こっても回復が早い。疲れていてももうひと働きできる。

軽い腹圧のかかった呼吸、これを私は「微腹圧呼吸」と名付けている。健康法を極めていくと、必ずこの「微腹圧呼吸」に至る。偉い呼吸法の先生方が口をそろえて勧める腹式呼吸とは、正確に表現すると「微腹圧呼吸」である。それには立ち姿や坐り姿を腹筋優位の姿勢にすることが不可欠である。次の段取りで行う。

椅子に坐り姿勢を正したあと、体幹をやや後ろに反らし、腹筋の働いている内部感覚を確認する。徐々に反りすぎた姿勢をもどして、かすかに腹筋の働いている角度を見つける。この内部感覚を維持したまま、横隔膜を意識しながらゆっくりと腹式呼吸をすると、自動的に「微腹圧呼吸」が始まる。そのままゆっくりと腹式呼吸を続ける。初心者は吸気10秒、呼気10秒の呼吸を3分間行う。

よーく身体を感じてみると、吸気時に横腹が膨れたがっていることがわかる。微腹圧がかかっている証しである。「息を横腹に入れる」呼吸法は、声楽家やアナウンサーの発声法とも同じである。修行を積んだ坊さんも、無意識にこういう呼吸をしている。

このとき腹部臓器に何が起こっているのか。腹部臓器には前面からの腹筋と上面からの横隔膜に挟まれて間断なく圧力がかかる。腹部臓器のなかにはげっぷとおなら以外の気体はないから、圧力がかかればその圧力は出口を探す。パスカルの原理である。

「密閉容器中の流体は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当りの圧力をそのままの強さで、流体の他のすべての部分に伝える」
                                       出典:パスカル『液体の平衡及び空気の質量の測定についての論述』の紹介
                                            (金沢工業大学ライブラリーセンター)

出口を探す圧力は腹部の血管にも、単位面積当たりの圧力がそのままの強さで、かかることとなる。その結果、腹部の静脈血は通常よりも強く押し出され、身体中を循環する。つまり、腹部うっ血の解消である。腹部の血液温度は手足の血液よりも1~2℃高いので、身体の表面では体温が上がって、額も汗ばむ。

腹部の静脈血が通常よりも強く押し出されたら何が起こるか。当然、腹部臓器に新鮮な動脈血が流入する。その結果、腹部臓器の機能が向上し、育っていく。胃腸肝腎がたくましく育つ。便秘が治り、むくみが減り、酒に強くなる。私の0歳から続いたぜんそくの3分の1は、この「微腹圧呼吸」によって腹部臓器を鍛え上げた結果、消えていった。

大切な注意点としては、功をあせって強い腹圧をかけてはいけない。血液は身体中に満タンではなく、必要な部位に偏在している。腹部臓器に集結すれば、神経系や運動系で薄くなる。その結果、全身に節々の痛みが出てくる。虚血性のしつこい頭痛や肋間神経痛も出てくる。風邪の前症状、悪寒・体痛と同じである。脳の虚血では記憶再生が思うようにできない。また、複雑な思考を続けることもできなくなる。バランス機能が低下する。一日中ぼーっとしている。あるいは、めまい・吐き気がする。以上のような弊害を生むリスクがある。

内臓を育てるのは身心の全体を総動員し、痛みながらきしみながら取り組む大事業である。安易に強い腹圧をかけてはいけない。必ず軽い腹圧でなければいけない。だからこれを「微腹圧呼吸法」と名付けた。かならず「微」でなければいけない。そして半年はかかる。

プロフィール

1949年、福岡市生まれ。1974年、花園大学仏教学科を卒業。1982年、佛眼厚生学校(現・京都仏眼鍼灸理療専門学校)を卒業、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。京都・嵐山薬師禅寺住職。元・花園大学非常勤講師(東洋医学)。著書に『プチうつ 禅セラピー』(禅文化研究所)、『絵を見てできる禅的体操』(法研)など。