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【第3回】あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス 中心軸を鍛えて集中力を高める

樺島勝徳

2017.02.17


京都・嵐山薬師禅寺住職で鍼灸マッサージ師でもある樺島勝徳氏の考案した、簡素で静かな動きの体操を紹介する本連載。今回は深層筋肉群(インナーマッスル)を覚醒させるための独特なメソッドを紹介する。

第2回「身体の陰側を育て鍛える股関節運動にも書いたが、私の体操は、「陽より陰、陰より禅、禅よりはらわた」を基本としている。前回では「陽より陰」を述べた。今回は「陰より禅」である。

禅は古代インドのサンスクリット語で「集中」を意味するdhyāna(ディヤーナ)の音写である。だから「陰より禅」は「表層の経絡よりも集中に関与する深層の中心軸筋肉群を育てよう」ということになる。鍼刺激は深層の筋肉群を直接刺激することはできないから、頭上に重しを載せて中心軸筋肉群の覚醒を促す。具体的にはこうだ。

1.頭上に1kg程度の重しを載せて椅子に坐る

重しは、落としたときに破裂しないように、厚めのビニール袋を三重にして中に砂を入れる。袋の口をきつく縛ってコロンとした形に仕上げる。ダラーとした重しでは、中心軸以外を刺激することになり目的を達成できない。さらに、風呂敷などの布でくるむと完成である。

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すぐに分かるのは、脊柱起立筋の姿勢反射が強化されていることである。意識脳によって背筋を伸ばさなくても脊柱が垂直に立つ。深部腹筋を起動させるために、両足裏を床から浮かすとさらによい。反射は中枢神経に備わった生来の機能だから、特に努力をする必要はない。その結果、猫背の凹凸が平均化する。鍼灸医学の言葉でいえば、膀胱系の虚実が平均化される。面白いことに、肩関節の可動域が拡大する。そのほか心身両面にわたってさまざまな変化が起こる。五十肩の患者などで試してみるとよい。

2.立位で頭上に重しを載せて前進・後退の歩行

本来、大して難しい動きではないが、中心軸のアヤフヤな人には難しい。特に後ろ歩きが難しい。重しを落としてしまう人もいる。一日中パソコン仕事をしているような座業の人は、若くてもブザマに歩く。ファッションモデルになった気分でウキウキと練習してみるとよい。起居動作の動きが美しくなる。

3.片足立ちで大腿水平、さらに挙上

片足立ちになり、浮かせた側の大腿を水平に保つ。次いで、さらに挙上する。このとき、自身の手で介助してギリギリまで高く挙上し、徐々に介助の手を離しながらも、膝の位置が下がらないようにする。

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大腿は自重で徐々に下がってくるが、水平以下に下げてはいけない。大腿挙上の動きは水平までは表層の大腿四頭筋が主役だが、さらに挙上するときに大腰筋などの深層筋が登場する。深層筋は中心軸の筋肉でもあるので、この筋肉なしに集中力は高まらない。

4.大腿挙上、さらに骨盤挙上

前項の動きに、さらに骨盤挙上を加える。まず、右大腿を水平に保ち、次いで、さらに挙上し、さらに、臍を絞るような動きで右骨盤を挙上する。

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このとき、出っ尻になってはいけない。腰を横に振るカワイイ動きになってもいけない。いずれも表層の筋肉が働いている動きだからである。あるいは、肩が力んでもいけない。もちろん、挙げたほうの大腿を水平以下に下げてはいけない。結構つらい。

次いで、左右を替えて3と4の動きを行う。これらの動きが難なくできるようになると、骨盤が立ってくる。本気で鍛えた股関節の前側には、2週間くらい軽い筋肉痛が起こる。さらに、仙骨下部にコリのような痛みが発生する。固まっていた関節が動きだしたのだろう。腹部では気界・丹田に張りが出てくる。

私は人間のからだをゴボウ天に譬えている。禅(中心軸)がゴボウで、周囲の手足を動かす運動系が魚肉部分である。ゴボウを構成する筋肉は、腹横筋・大腰筋・腰方形筋などの深部腹筋群と脊柱起立筋群である。頚部では椎前筋を加えるとよさそうだ。魚肉部分には東洋医学の経絡が五行で走っている。厳密な解析は専門家の意見を聞きたいが、実践的にはこのようなイメージで行っている。中心軸筋肉群を育て鍛え始めてから、私の体操教室に通っている皆さんは心身ともに安定度が増してきたように思う。

■第1回はこちら あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス 手足の血流を改善する循環器運動

■第2回はこちら あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス  身体の陰側を育て鍛える股関節運動

プロフィール

1949年、福岡市生まれ。1974年、花園大学仏教学科を卒業。1982年、佛眼厚生学校(現・京都仏眼鍼灸理療専門学校)を卒業、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。京都・嵐山薬師禅寺住職。元・花園大学非常勤講師(東洋医学)。著書に『プチうつ 禅セラピー』(禅文化研究所)、『絵を見てできる禅的体操』(法研)など。