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Massage Today
第16回 治療家の触診力を高める“Why”思考

Leon Chaitow, ND, DO

2017.01.18

訳:編集部
Reprinted with permission from Vol.17, Issue 01(January, 2017)of Massage Today. Massage Today Vol.17, Issue 01(January, 2017)より許諾を受けて、Leon Chaitow氏の記事を転載しています。Massage Today公式サイトもご参照ください。 www.massagetoday.com


 

専門家が仕事で瞬時に決定するプロセスについて考えたことはあるだろうか? 専門家は、瞬時に観察し、認識し、解釈し、判定し、決定し、適切に行動する能力を持つ。その行動は、予定された意思決定に基づくものではなく、しっかりした知識と熟練した技術の土台に基づくものである。下記の例を考えてほしい。

・綱渡り芸人が高く張られた綱の上で、瞬時にバランス調整をしてバランスを保つ。

・野球でピッチャーがバッターの弱点をほぼ直感的に観察して利用する能力。

・神経外科医が手術中に、予期しない逸脱に基づいて、メスの予定された切断方向を瞬時に変更して、救命する。

・演奏しながら同時に聞いた音に基づいて途切れずに、即興で演奏するジャズ演奏家の能力。

・そして、もちろん、我々も他者と話しながら、よく似たことを毎日行っている。対話の形と内容が予測不可能な方向に向かうと、我々は即興で反応する。

 

直感だけではない

そのような即興をただの直感とするのは間違いだろう。専門家の環境での直感は、しっかりした土台に基づく必要がある。さもなければ、我々全員が脳外科医や才能のある音楽家になってしまうだろう。熟練したマニュアルセラピストは専門家でもあるため、これは、他の分野と同様、マニュアルセラピーにもあてはまる。

Donald Schonは行為内内省を議論している。彼の言葉を引用する。

「多くの場合、有能な実践家は、症状の迷路で、特定のパターンを認めて、それに対処する上で首尾一貫した設計の基礎をつくる……何かが行われているのだが、容易に説明できない。実践家・治療家は、[常に]十分な基準を伝えることができない質を判断する。実践家[治療家]が不確定な実践領域で、[時に]自身のパフォーマンスに困惑する理由を理解するのは難しくない。」1

組織がおかしいと感じるときのように、触診で正常から逸脱していることを述べるほうが、その違いを説明するよりもはるかに簡単である。施術者ならこのことに共感できるはずだ。触診の間、我々の手は、正常性と異常性を認識する。しかし、認められた違いを言葉で表そうとしたり、分析しようとしたりするのは必ずしも簡単ではない。多くの熟練した人々が、複雑な動きを学びながら、その動きを説明することが説明できなくても、すべての分野でノウハウを示している。


触診:技術+芸術

局所的な筋骨格機能不全のエビデンスを探すとき、4つの基本的な特徴的徴候が評価されなければならない。2 これらの特徴を説明するのに頭字語“STAR”を用いる。

①感度(Sensitivity)

痛みや圧痛は、圧迫や運動に反応するか?

②組織上の変化(Textural changes)

組織の異常は、触診し、観察できるか?(例:硬い、緊張、弛緩など)

③非対称(Asymmetry)

身体の片側だけが影響を受けるか?

④制限(Restriction)

可動域が変化したエビデンスがあるか?

観察、触診、評価によって、これらの特徴の組み合わせが位置づけられ、確認された場所は、筋骨格領域の機能不全のエビデンスが存在する場所にもなる(オステオパシー医学では身体機能不全として説明される)。

・評価している軟部組織はどのくらいの緊張、弛緩、硬化、高緊張・低緊張を示すか?

・検査している関節は、正常な関節と比較して、どのくらいの可動性、制限、機能性・機能不全を示すか?

・関連する筋膜組織は、正常に機能しているか? など……

 

もちろん、この種の触診に関するエビデンスは機能不全がなぜ生じたかについて教えるわけではない。機能不全が存在する可能性だけである。

検査、触診、観察の評価は、評価している組織の感受性が高くて、非対称で、制限されて、短くて、硬くて、弱い、といった“What”の疑問に答えてくれるかもしれない。しかし、そのような知見は実際の臨床ですべきことに関する適応を提供しない。

“Why”を尋ねることで、我々は治療選択を狭めることができる。

・なぜ、圧迫に対する感受性が高いのか?

・なぜ、これらの組織は制限されているのか?

・何が、自由な可動域を妨げているのか?

・何よりも、これらの所見を引き起こし、維持させているものは何なのか? 酷使、反復的な緊張、姿勢といった因子によるものだろうか? もしそうならば、緩和させ、再発を予防するのに何ができるだろうか?

・マニュアルセラピーやエクササイズで有益に緩和できる、もしくは、されるだろうか?

・機能不全の領域は、他の未確認の問題に起因するものか? 例えば、代償パターンの一部だろうか?

・または、反射的な活動や局所のトリガーポイント活動から生じたものか?

 

何を感じ、何を知覚し、そして最も重要なこととして、触診と評価から集めた情報をどのように解釈するか――。それが、治療家が依頼される問題をどのように治すかについて決定する基準になる。

 

参考文献

1.Schon D. “Teaching by the Case Method.” Boston: Harvard Business School, 1984.

2.Fryer G, et al. The relationship between palpation of thoracic paraspinal tissues and pressure sensitivity measured by digital algometer. Journal of Osteopathic Medicine, 2004;7(2):64-69.