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実践!側臥位マッサージ

羽鳥節子

2016.09.30

患者を横向きにすれば施術の幅がこんなに広がる


8月に刊行したDVD「極める!側臥位マッサージ」。紹介しているテクニック、すべてが側臥位でのマッサージで、腹臥位や背臥位の姿勢がとれない患者にも対応でき、マスターすれば施術の幅を広げることができる。今回は、このDVDの翻訳を担当した羽鳥節子氏(はり・きゅう・マッサージ taulli)に、側臥位マッサージのメリットや適応についての解説をうかがい、さらに、普段の治療に取り入れることができる側臥位テクニックを実践してもらった。

 

妊婦や高齢の患者に最適

「土地柄なのか、当院の患者さんの95%が女性です」
代官山に開業している羽鳥氏は、女性患者を治療する機会が多い。
「その中には肩こりや腰痛、足のむくみを訴えて来院する妊婦さんもいらっしゃいます」

お腹の大きな妊婦に腹臥位マッサージをすることはできない。背臥位や側臥位でマッサージを行うことになるが、背臥位だと症状を訴える肩や腰にアプローチすることが難しい。以前は、側臥位マッサージをそれほど行っていなかった羽鳥氏も「このDVDの翻訳を始めてから妊娠中の患者さんに側臥位マッサージを取り入れるようになりました。今年の6月に無事出産をした患者さんにも、妊娠後期に側臥位でのサイドストレッチや肩甲骨周囲へのマッサージをしましたが、非常に効果的でした」と話してくれた。弊社で発刊した『妊婦マッサージ』(監訳:早乙女智子、形井秀一)では、側臥位を「妊娠中のマッサージで最も安全なポジション」として推奨している。子宮靭帯と筋の緊張を最も少なくする体勢で、子宮内圧も上昇することがないことを理由として挙げている。

側臥位が適した患者は妊婦だけではない。羽鳥氏は「以前勤めていた治療院では、腰が曲がってしまい腹臥位が難しい高齢の患者さんが多くいらっしゃいました」と振り返った。「腹臥位も背臥位も難しい患者さんに出会った時に、側臥位をマスターしていれば、自信を持って対応することができるのではないでしょうか」

妊婦や高齢者など、患者が取れるポジションに制限がある場合に、側臥位で対応することができれば、さらに多くの患者に喜んでもらうことができそうだ。

 

肩甲骨周囲へのアプローチがしやすい

羽鳥氏が肩甲骨周囲のマッサージをする際に気をつけていることがある。
「浅層部の筋肉だけではなく、深層部の筋肉へアプローチすることを意識しています」
たとえば、患者が痛みを訴える箇所が僧帽筋であっても、その原因となる筋肉は別にある場合も考えられるため、一つひとつの筋肉に正しくアプローチする必要があるためだ。

肩甲骨周囲は浅層部が三角筋や僧帽筋に覆われており、棘上筋や棘下筋、菱形筋などはその下の深層部にある。正しくアプローチするには、患者の肢位を変えたり、術者の手指の圧や角度を調整しなければならない。腹臥位や背臥位でも肩甲骨周囲へのアプローチは可能だが、側臥位にすると、特に肩甲骨内側縁と胸郭の間(肩甲下筋)へのアプローチが容易になる。さらには、側臥位にすることで、上側にある肩関節を自由に動かせるようになり、自動でも他動でも関節運動を行いながら、マッサージすることができる。筋肉の緊張を緩めるだけではなく、筋肉の機能改善にも有効なテクニックと言えそうだ。

 

経絡を意識すれば、側臥位がさらに効果的に

今回のDVDで紹介しているのは上肢や下肢、背部などの各筋肉に対するマッサージがメインとなるが、羽鳥氏は「側臥位では、特に少陽経(胆経・三焦経)へのアプローチがしやすいので、鍼灸との組合せで、さらに効果的な治療ができるでしょう」と鍼灸マッサージ師らしい視点を教えてくれた。

側臥位マッサージの特徴の一つが、普段の施術に簡単にプラスすることができること。鍼灸治療をする前後に側臥位マッサージを取り入れれば、治療効果もあがるのではないだろうか。

 

実践!側臥位マッサージ

DVDでは70以上のテクニックを解説しているが、今回はその中でも羽鳥氏がおすすめする肩関節周囲への3つの側臥位マッサージを、普段から行っている腹臥位マッサージにプラスして実践してもらった。

・棘上筋へのアプローチ(腹臥位、側臥位)
・棘下筋・小円筋・菱形筋などへのアプローチ(腹臥位、側臥位)
・カトリーナ・テクニック

 

棘上筋へのアプローチ(腹臥位)

患者を腹臥位にして、上肢をリラックスさせる。
施術者は、棘上筋の走行に沿うように肩甲骨の棘上窩から肩峰に向かって、母指でスライドしながら揉揑する(図1、図2)。棘上筋は僧帽筋に覆われているため、揉揑はやや強めに行うとよい。

 

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図1


図2

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棘上筋へのアプローチ(側臥位)

棘上筋には肩関節を外転する働きがあるため、肩関節を伸展、内転、内旋することで棘上筋がストレッチされる(図3)。
施術者は一方の四指で棘上筋を圧迫しながら、もう一方の手で患者の手関節を把持して、肩関節を基本肢位から伸展、内転、内旋させる(図4、図5)。
このストレッチを筋緊張が緩むまで繰り返し行なう。棘上筋への圧迫は筋繊維の方向に沿って、動かしながら行ってもよい。

 

図3

図3

 

図4

図4

 

図5

図5

側臥位のメリット!

他動運動がしやすく、関節運動を伴いながら効果的にアプローチすることができる

 

棘下筋・小円筋・菱形筋などへのアプローチ(腹臥位)

患者を腹臥位にして、施術者は患者の頭側から、大小菱形筋の付着部(棘突起〜肩甲骨内側縁)に、重ね母指で圧迫と揉揑を加える(図6、図7)。
棘下筋には手拳や母指で揉揑を加え、肩甲下筋・小円筋へは母指で圧迫、揉捏を行う(図8、図9)。

 

図6

図6

 

図7

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図8

図8

 

図9

図9

 

              

 

棘下筋・小円筋・菱形筋などへのアプローチ(側臥位)

患者を側臥位にして、施術者は患者の背部に壁を作るようにして、下腿部と大腿部で患者を固定する(図10)。

肩甲骨内側縁と胸郭の間に滑り込ませるように一方の四指を入れ、もう一方の手指で肩関節を覆うように把持し、円を描くように他動的に運動を加える(図11)。

肩甲骨内側縁に入れている四指を内側縁に沿って移動させることで広範囲にわたり、アプローチすることができる(図12)。
また、肩関節と肩甲骨を把持したまま、施術者が後方に重心を移動するだけでも、肩甲骨周囲の筋や筋膜がストレッチされる(図13)。

 

図10

図10

 

図11

図11

 

図12

図12

 

             

図13

図13

 

 

側臥位のメリット!

肩甲骨内側縁と胸郭の間(肩甲下筋)にアプローチしやすい。上肢の重さを利用することができ、最小の力で施術ができる。

 

 

カトリーナ・テクニック

患者の下側の肩関節を伸展位にすることで(図14)、肩甲骨が浮き上がり肩甲骨内側縁と胸郭の間(肩甲下筋)にアプローチしやすくなる。
一方の手指を肩関節に添えることで肩甲骨をさらに浮き立たせるようにし、もう一方の四指を肩甲骨内側縁と胸郭の間に滑り込ませるようにアプローチする(図15、図16)。
二指揉揑や手指の尺側を使ったアプローチ等、患者や施術者のやりやすい方法で使うことができる。
ちなみにカトリーナ・テクニックという名称は開発者の名前に由来している。

 

図14

図14

 

図15

図15

 

図16

図16

 

ここでは、側臥位マッサージの肩甲骨周囲のテクニックを紹介してきた。DVDでは、肩甲骨周囲以外に背部や腰部、殿部、足部へのテクニックも解説している。また、施術者・患者のポジションや患者の関節の動かし方、妊娠期の患者をマッサージする際に気をつけるべきことなども確認することができる。ぜひ参考にしてほしい。

 

 

DVD「極める!側臥位マッサージ」

http://www.idononippon.com/dvd/massage/0159-4.html

紹介している70以上のテクニック、すべてが側臥位でのマッサージ。手技別に細かいコツを解説しているので、誰にでも分かりやすく、現在の治療にプラスして取り入れることができる。患者のニーズにさらに応えたい治療家の方々に、最適のDVD。