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【第2回】あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス  身体の陰側を育て鍛える股関節運動

樺島勝徳

2016.12.16


京都・嵐山薬師禅寺住職で鍼灸マッサージ師でもある樺島勝徳氏の考案した、簡素で静かな動きの体操を紹介する本連載。第1回の背臥位で行う循環器運動に引き続き、今回は側臥位で行う股関節運動を紹介する。

 


 

私の体操は、「陽より陰、陰より禅、禅よりはらわた」が、基本である。じっくり育てて鍛えるべきは、身体の陰側、体軸、内臓、という意味である。私の寺は禅寺だから、体軸がらみの事柄はすべて「禅」という言葉を使っている。身体の陰側を育て鍛えるには、手足の陰側経絡を軽い負荷で自動運動する。ねらいは補法の鍼と同じである。

下肢で具体的にいうと、下図のように側臥位になり、一方の膝を立て、天井側の腕は胸の前で身体を支えて基本姿勢とする。この姿勢のまま、床側の下肢を床すれすれから股関節の可動域限界まで大きく動かして円を描く。重く感じる角度やそうでもない角度を探りながら、ゆったり大きく描く。

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10回ほど円を描いたら、反対側も同様に行う。

股関節の動きは複雑多様で、それを暗示するように大小長短数多くの筋肉が股関節を取り囲んでいる。動きの解析はなかなか困難だが、この基本姿勢で下肢を動かすと、その重みは股関節内側の筋肉にかかることになる。これを「陰側経絡の動き」としておく。

試してみると分かるが、この動きはなかなか大変である。自分の下肢が重いのである。下肢を床から浮かすことすらできない人もいる。膝の痛む人、腰痛持ちの人、股関節の重だるい人などには、こういう股関節内側の筋肉の未発達や老化、萎縮が隠れている。同じ下肢でもそれを引き上げる筋肉によって感じる重さは変わる。

最も重く感じる角度のときに働いている筋肉が最も弱っている筋肉であるとして、これを「脾経の虚」「腎経の虚」などと理解してもよい。極めて雑な理解だが、重く感じる角度を微妙に探し当てることができていれば、理解は雑でも問題はない。通常の生活では、この弱っている筋肉に痛み・違和感は発生しない。かえってそれを代償する陽側の筋肉に痛みが出る。あるいは、骨盤がゆるみ脊柱のS字が大きくなって、膀胱経の虚実として現れる。あるいは遠く離れた喉の炎症などに現れる。

次に、この姿勢のまま床側の膝を90度くらいに折り曲げ、膝を床から浮かせた定位置に保ちながら踵を上下する(下図)。股関節をねじる動きである。膝を床から浮かすだけの筋力がない人は、膝を床につけたまま行う。

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10回が終わったら、反対側を行う。

「踵を上下する」とは、踵が天井のほうに近づき戻る垂直の動きである。単に膝を屈伸して、踵を水平に動かしているにもかかわらず、踵を上下していると思い込んでしまう人もいるから注意を要する。股関節内側の筋肉が弱いと、無意識のなかでこのような動きをしてしまう。無意識の癖だから、指摘してもなかなか直らない。どうしても弱っている筋肉を避けた動きになってしまう。

注意しても直らないくらいだから、日常の無意識の動きでは、常に弱っている筋肉に負担をかけない動きになる。そうして弱い筋肉はさらに弱くなり、バランスが崩れ、崩れた筋肉バランスに応じた痛みが現れ、長い年月の間に関節が変形する。

股関節の運動はまだまだ種類があり、私の体操教室で実際にはさらに多くの種類を行っている。教室を始めた頃よりも随分と種類が増えた。ほとんどの動きは、自分の腰痛や膝痛、また花粉症・ぜんそくなどの持病との関係で発見し開発している。ここで紹介した動きも、私自身の膝痛を契機として体操教室のメニューに加わった。おかげで下部腰椎や仙腸関節の動きが安定し、もちろん膝痛もよくなった。この運動は体軸としての脊柱を真っすぐに立てる基礎工事といえそうである。

 

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筆者が35年前に日曜大工で建てた道場の外観

 

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道場内観。27畳の床は柔らかいじゅうたん張り


■第1回はこちら あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス 手足の血流を改善する循環器運動

プロフィール

1949年、福岡市生まれ。1974年、花園大学仏教学科を卒業。1982年、佛眼厚生学校(現・京都仏眼鍼灸理療専門学校)を卒業、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。京都・嵐山薬師禅寺住職。元・花園大学非常勤講師(東洋医学)。著書に『プチうつ 禅セラピー』(禅文化研究所)、『絵を見てできる禅的体操』(法研)など。