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【第1回】あはき住職が語る 禅的体操のエッセンス 手足の血流を改善する循環器運動

樺島勝徳

2016.11.14


薬師禅寺住職の樺島勝徳氏は、簡素で静かな動きの体操を教える教室を30年以上にわたって続けている。「禅的体操」と名づけられたこの体操は、デスクワーク中心の生活をしている人や中高年など、どちらかというと身体が丈夫でない人に向けて、少しの運動量で筋肉や内臓を鍛えられるように構成されているという。この連載では、禅的体操の方法や背景となる考え方を樺島氏に紹介してもらう。患者指導や、自身の養生に取り入れてもらいたい。


私は鍼灸・指圧師であり、禅寺の住職である。寺とはいっても、檀家のない寺なので、経を読むことはほとんどない。活動の多くは体操教室での指導である。四畳半のお堂しかない貧乏寺だったので、およそ35年前、27畳の道場を一人で建てた。日曜大工で2年半かかったが、この道場が私の人生を支えてくれている。

私の体操は鍼灸医学を運動法として「翻訳」したものが多いが、ここでは「翻訳」したもの以外の運動をご紹介しよう。まずは、循環器運動である。

循環器運動は壁を使って下図のような姿勢をとり、股関節の動きから始めて、膝関節、足首の関節、足指の関節、と順次、関節の可動域の限界まで動かす。ふくらはぎや足底がけいれんしそうになるまで静かに強く動かす。腕や手も、下肢の動きにつきあう。何回もけいれんしそうになるまで強く動かしていると、突然スーッと楽になりけいれんしなくなる。この姿勢での血液循環の態勢が整ったのだろう。全体でおおよそ15分をかける。

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寝ているとき以外、常に心臓よりも下にある手足には、古い静脈血が溜まる。夕方になると足がむくみ、靴が入りづらくなるのは誰もが経験する。そこで手足を心臓よりも上にあげる。当然、手足の先端は血液が不足状態になり、うっ血が体幹にかえっていく。停滞している循環の中で、さらに手足の運動を加えて血液を要求し、追い討ちをかける。手足の筋肉細胞はあわてはじめ、痛みが走りけいれんが起こる。ここに至ってはじめて手足の自然治癒力にスイッチが入る。毛細血管が充実・発育して血液循環の吸引力が発生する。そして毛細血管網がたくましく育ち、循環系の全体が健康になる。血圧は下がり心臓の肥大も改善に向う。

手足を心臓よりも上に挙げて運動する、というアイデアは、もともと西式健康法でいう「毛細管現象発現運動」にある。「血液循環の原動力は心臓ではなく、身体各所の毛細血管網の吸引力にある」という理論に基づいている。西式健康法は西勝造が1927年に創始し、戦前広く行われた健康法で、今でも根強い人気がある。本家の正しい西式では、壁に下肢をもたれかけることはない。しかし腰痛のある人にとって、西式のように背臥位で下肢を垂直に天井のほうに挙げることは難しい。だから私の教室では壁を使う。

循環器運動では一時的に心肺のうっ血がおこるので注意が必要である。胸苦しさ、せき、たん、不整脈、軽い呼吸困難などを感じたら、すぐに中止する。

この運動を始めた頃、私はいつもとは違うぜんそくの発作が起こっていた。0歳からの小児ぜんそくが治らないまま30歳を過ぎていた頃である。当初原因が分からず、いつものように気管支拡張剤を吸入していたが、あまり効かない。そしてこれが心肺のうっ血症状であり、病名では心臓性ぜんそくにあたる、と分かってきた。

しかし数カ月続けているうちに、不快な症状は徐々に薄れ、確実に循環機能が改善する。下肢の力がつき自転車での坂道が楽になった。心肺のうっ血症状は消え、手足が温かくなり、ぜんそく発作は半減した。

私自身のこういう経験や、体操教室の参加者の変化から、「循環器運動は末梢の細胞一つひとつから心臓循環系を強化する方法である」と確信できた。中枢は末梢によって生かされる、という生命の動的な姿を垣間見ることができたのである。

プロフィール

1949年、福岡市生まれ。1974年、花園大学仏教学科を卒業。1982年、佛眼厚生学校(現・京都仏眼鍼灸理療専門学校)を卒業、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。京都・嵐山薬師禅寺住職。元・花園大学非常勤講師(東洋医学)。著書に『プチうつ 禅セラピー』(禅文化研究所)、『絵を見てできる禅的体操』(法研)など。