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鎮痛に対するマッサージセラピーの有効性を研究で確認

Tim Herbert

2016.10.07

鎮痛に対するマッサージセラピーの有効性を研究で確認

 

Tim Herbert 


 

データ

痛みの治療で過剰摂取されるアヘン剤

アメリカン・ポップスのスーパースターであるプリンスが、今年初めに過量のフェンタニルで亡くなった。フェンタニルは、ヘロインより50倍強力な合成アヘンで、オピオイド鎮痛薬の一種である。米国で、オピオイドが原因で亡くなった人の総数は、2014年の2万9000人から上昇傾向にあり、プリンスはそのなかで最も有名な人物の一人となった。

米国では、薬剤の過量服用よる死亡は、いまや自動車事故によるものより多く、傷害による死因の第1位となった。痛みの治療で処方するアヘン剤の濫用は多くの場合、処方薬とヘロインのような違法薬物の常用癖につながる。これは、公衆衛生の致命的な危期であり、米国のほぼあらゆる地域に影響を及ぼしている。

米国では、鎮痛の薬理学的アプローチがあまり機能していない。それよりずっと安全なアプローチとして、マッサージセラピー、ヨガ、鍼治療、瞑想のような他の補完・代替的療法がある。これらの補完・代替的療法は、鎮痛に用いる薬剤量を減らす見込みがあるが、実質的な基礎・臨床研究が不足しており、効果が生じるメカニズムは十分には理解されていない。

その結果として、安全で有望な補完・代替的療法は、主流となる医療産業と保険会社からは、軽視されないにしても、かなり見落とされてきた。痛みの治療を代替する方法がなければ、アヘン剤はこれからも処方され続けて、過剰処方がなくなることはないだろう。

マッサージセラピー研究のメタアナリシスが公開

ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial: RCT)は米国での研究の「ゴールドスタンダード」であり、主に薬剤を調べるのに行われる。製薬会社にはRCTに投資する財源と動機があるが、マッサージセラピーと他の補完療法の研究では、RCTを行うのが難しい。多くの変数が研究結果に影響し、その結果は患者、社会心理的因子などからの主観的フィードバックによって変化することが多いからである。

さらに、これらの分野には、研究資金を助成できるほどの財政能力がない。そのため、補完療法のポジティブな臨床転帰は、一部の例外を除いて、逸話的で確実な再現性はないものとみなされ、これらの補完療法は活用されなくなってしまう……というのが、これまでのマッサージ研究の状況であった。だが、今、新しい展開を迎えている。

オンライン学術誌『Pain Medicine』は最近、痛みに関するマッサージセラピー研究のメタアナリシスを新しく公開した。これは Samueli InstituteとMassage Therapy Foundationの共同サポート、American Massage Therapy Associationの財政援助で行われた。これは米国のマッサージセラピストにとっては画期的な展開である。

過去10年間、小さく控えめなサイズの研究はたくさんあり、その多くはMassage Therapy Foundationにより資金助成されていた。そして、Samueli Instituteによるこのプロジェクトはこれまでのマッサージセラピー研究でおそらく最も信用できる総合的メタアナリシスである。これは非常に大きな範囲で、痛みと不安を抱える患者の治療に関する公衆衛生的な議論にマッサージセラピーを出した最初の研究プロジェクトで、健康管理の実施システム全体に影響を及ぼしつつある。

このメタアナリシスの手順は開始日付から2014年2月までの重要なデータベースの検索から始まった。全体で、67の研究が評価された(60が「質が高い」、7が「質が低い」)。

「適格なランダム化比較試験はSIGN 50 Checklistを用いて方法論的な特性が評価された。メタアナリシスは、アウトカム・レベルで行われた。多様な運営委員会が結果を解釈して、勧告を作成した」

(Pain Medicine, The Impact of Massage Therapy on Function in Pain Populations-A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials: Part I, Patients Experiencing Pain in the General Population, May 2016)

「マッサージは筋標本の炎症性サイトカインの産生を減少させる。それによって局地的な炎症を低下させることがわかった。他の研究は、弛緩反応をもたらすマッサージの心理的影響を明らかにした。機能磁気共鳴画像を使った研究は、ストレスと感情調節に関与する脳の部位に対するマッサージの影響を示唆した。これらの興味深い知見にもかかわらず、マッサージの治療効果の本質は、じれったいほど詳しく説明できていないままである」

(Pain Medicine, Massage Therapy for Pain-A Call to Action, May 2016.)

Samueli Instituteのメタアナリシスは、マッサージセラピーが有意に痛みを和らげて、不安を軽減して、痛みを抱える母集団の健康に関連する生活の質の測定基準を改善すると報告した。実際のマッサージ群とプラセボ群を比較して、マッサージセラピーは、各種の病態、痛みの減少と気分の向上に推奨される。

「エビデンスに基づいて、マッサージセラピーは、無治療と比較して、痛みの管理の選択肢として強く推奨されなければならない」

(Pain Medicine, The Impact of Massage Therapy on Function in Pain Populations-A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials: Part I, Patients Experiencing Pain in the General Population, May 2016)

Samueli Instituteのメタアナリシスが画期的な理由の1つは、マッサージには多面的で複雑なメカニズムの不確定性があるにもかかわらず、評価した幅広い範囲の研究が信頼できる共通因子を明かし、測定可能な結果を示したことである。

「マッサージの影響に関する提案されてきたメカニズムは、バイオメカニクス的、生理学的、神経学的、心理的影響に分類される。多くの研究者は、各種類の影響が組み合わさっている可能性があると考えている」

(Pain Medicine, Massage Therapy for Pain-A Call to Action, May 2016.)

複数レベルの治療効果が生じる臨床環境では、異なった研究結果の因子を切り離すことはほとんど不可能である。痛みが持つ多次元的性質は、痛みの研究実施を困難にし、かなり費用がかかるものにしてしまう。

また、マッサージセラピーに関する多くの研究の必要性は、市場からの需要により加速している。

「慢性痛で苦しむ多くの人は、慢性痛の原因は何にせよ、この痛みに対処する非薬理学的な解決案を探している。そして、マッサージセラピーは痛みの問題に対する経済的かつ現実的に実行可能な解決案であると証明している」

(Kathryn Feather, Transforming the Practice of Massage, Massage Today, July 2016)

痛み管理で推奨されるマッサージセラピー

Massage Therapy Foundationで進行している研究と、Samueli Instituteによる注目すべきメタアナリシス・プロジェクトのおかげで、長年にわたって行われたマッサージセラピーの研究は、首尾一貫したパターンに組み立てられた。このパターンは痛みの治療におけるマッサージセラピーの有望さを伝えてくれる。痛みを抱える患者に投与するアヘン剤の依存を減らすプランの一つとして、マッサージセラピーを病院とクリニックに統合する取り組みが、すでに進行中である。

Samueli Instituteによるメタアナリシスの公表のタイミングは、マッサージセラピストにとってこれ以上ないものだっただろう。2016年3月、国立衛生研究所は、「医療提供者と患者が痛みを治療する選択肢を最大範囲で利用できる生物心理社会的なケアモデルに基づく、患者中心の統合した痛み管理のシステム開発をサポートする」ことを求める国家的痛み戦略を発した。

痛みの管理で「強く推奨する」というSamueli Instituteの結論は、マッサージセラピーがこれまで閉じられてきた参入への扉を開くことになるだろう。このアプローチの発展が、オピオイドの常用癖と多くの不必要な死亡の発生率を減らすことを望みたい。

 

プロフィール

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Tim Herbert ティム·ハーバート

オレゴン州のアシュランド・インスティチュート・オブ・マッサージを卒業し、1988年からマッサージセラピーコミュニティの一員として活動。マッサージセラピー・ファンデーションに10年間勤め、6年間は副会長として活躍。2007年、Booksof Discovery社のディレクターに就任。2012年にはMassage Therapy Educatorのリーダーシップ育成委員会に選出された。