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Massage Today 第10回  癌患者に精油を用いる際に知っておきたいこと

Shellie Enteen, RA, BA, LMBT PhD

2016.06.28

癌患者に精油を用いる際に知っておきたいこと

By Shellie Enteen, RA, BA, LMBT PhD

訳:編集部

Reprinted with permission from Vol.15, Issue 04(April, 2015)of Massage Today.Massage TodayVol.15, Issue 04(April, 2015)より許諾を受けて、Shellie Enteen氏の記事を転載しています。Massage Today公式サイトもご参照ください。 www.massagetoday.com


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 マッサージ師が、何らかの癌治療を受けている患者に出会う確率は、この数十年間で高まっている。そういった患者に対して、マッサージ施術で精油を用いる場合、考慮すべき点がいくつかある。

 

 精油の業者は熱心に情報を流布しているが、精油による癌への効果は認められていない。「乳香(Boswellia carteri)の精油が抗癌性を持つ」と宣伝する人たちは、アロマテラピーの化学を見落としている。「局所摂取で治癒できる」とする人はなおさらである。なぜならば、乳香と癌に関する実際の研究のほとんどは、樹脂で見つかる有望な活性成分について言及しているに過ぎない。その活性成分の一つ、不揮発性のトリテルペンであるボスウェル酸は、樹脂が水蒸気蒸留されて精油が生成されると、存在しなくなるというのに。残念ながら、マッサージで乳香を塗布しても、奇跡は起きないだろう。

 

 「乳香の樹木の樹脂から作られるお茶を飲ませるのが効果的だ」という意見もある。だが、施術の範囲からも外れているし、そもそも望ましくない。と言うのも、乳香の樹木(Boswellia carteri)は絶滅危惧種であり、乳香の生産が規制されているため、希少となっている。この状況により、樹脂に代替物が混ぜられている確率が高い。仮に、100%純粋な樹脂が手頃なコストで利用できるとしても、これまでの研究が、身体に対して安全で、適切な量がどれくらいなのかを示しているわけではない。

 

 癌治療ではよくあることだが、癌治療を受けている患者に対するアロマテラピーの有効性に関する科学研究は、ほとんどない。我々が持つ情報の大部分は、アロマテラピストと患者の経験的エビデンスから来ているに過ぎない。

 

 私は、精油とマッサージを用いて、身体的および心理的な苦痛、または生活の質の変化を患者報告から評価した研究を見つけた*。最も観察された効果は、不安の軽減である。ただし、この研究は「精油の追加が不安を軽減するために必要である」とは結論づけてはいない。うつ病や痛みなどの症状で有益な作用がある可能性を報告しているに過ぎず、さらなる評価にはより多くの試験が必要であるとしている。私はこれ以外のエビデンスを見つけることができなかった。

 

 また、癌の予防や治療に関する精油であるモノテルペン、特にリモネンの含有量の研究がある**。しかし、生体外の一つの分離成分が、全精油の局所使用の経験を再現するわけではない。この研究によって、リモネン(レモン、柑橘類など)を含んだ精油のアロママッサージによる癌の治癒が認められたわけではない。

 

 しかし、だからといって、アロマテラピー・マッサージは、癌患者を助けることは全くできないのだろうか? 研究はマッサージにおける精油の有効性を否定したのだろうか? 私はそうは思わない。私の考えに一致する数十年間の経験的エビデンスがある。経験的エビデンスが、他の種類の研究より役立つこともある。

 

 癌患者の治療において、精油の使用に関する科学研究が行われる場合、非常に少ない数の試験しか選ばれない。精油は臨床的環境で適用され、臨床的環境は患者の反応にも影響する。熟練のアロマテラピストは、症状別ではなく、患者全体でアプローチして、精油を用いるのが最善であることを知っている。これは精油が身体、精神、情動、スピリチュアルのレベルで影響を及ぼすからである。痛みを緩和するとされているすべてのエキスが、細かいレベルでも同じ効果となるわけではない。臨床試験は、通常、これらの違いを対象にしない。

 

 ほんの少数のエキスしか試験に含まれない理由の一つは、クリニックや病院のような機関の症例で「有効」となるには、すべてのアプローチに合う精油が必要となるからだ。つまり、症状ごとに特定の精油が、適応となることを意味する。しかし、化学療法と放射線治療を受けている人には、人生への不安があるだろう。アロマテラピーの効果的な使用は、個々のニーズを確認して、対応する精油を用いることである。マッサージセラピーの施術において、患者の生命の問題すべてを知って対象にし、有効となりそうな特定のブレンドを作り出す機会がある。癌患者のマッサージで精油を用いる禁忌はあるだろうか?

 

 癌治療の間、特定の精油は、化学療法の成分の取り込みを阻害または増加させる可能性があるため、用いてはいけないと長く考えられてきた。この考えは、皮膚適用のほとんどの場合で、誤っていることがわかっている。精油の成分ゲラニオール(ゼラニウムなどで含まれる)の大腸癌の細胞に対する効果に関する生体外研究がある***。この研究は、ゲラニオールが存在する場合、5-FU(5-フルオロウラシル)の取り込みが増加することを示した。

 

 結論の記述では、「ゲラニオールは細胞膜を流動化することで、抗癌剤の細胞取り込みを支援する可能性がある。これにより、化学療法剤を低い濃度で用いることができ、同時に、副次的効果を低下できる可能性がある。齧歯類の異なる結腸癌モデルで、ゲラニオールと5-フルオロウラシルの組合せが結腸直腸癌の治療を最適化する有望なアプローチになるか調べる研究が進行中である」とされている。しかし、局所適用または散布では、この組合せを行うことはできない。そして、再度言うが、精油の全体的な化学作用における一つの成分の比率と効果は、分離した成分と同じではない。

 

 皮膚癌で用いる問題に関して、有名なアロマテラピストとEssential Oil Safety(第二版)共著者Robert Tisserandは、Robert Tisserand.comの2012年のブログで読者の質問に次のように答えている。

 

 「いくつかの精油は、他の物質の経皮的な浸透を強化する。これは広く研究された現象であり、研究は現在も進行中である。これが起こる理由は、一部の精油の成分は表皮を越えるのに非常に優れているためである。1991年のWilliamsとBarry による論文は、ユーカリ油の主要成分1,8-シネオールは5-フルオロウラシルの皮膚透過性を驚くべきことに、95倍強化するとしている。5-フルオロウラシルは皮膚癌を治療するために皮膚に適用される。この状況では、精油またはアロマテラピー製品を皮膚の同じ部位に適用するのは避けた方が賢明である。5-フルオロウラシルは(内部の腫瘍を治療するのに)静注で投与される場合、皮膚に精油をつけても影響はない。同様に、経口摂取された精油は、5-フルオロウラシルや他の物質の経皮移行には影響しない」

 

 マッサージ師が考慮できるものは、経験的エビデンスを利用することである。このエビデンスは癌治療で遭遇する異なる段階、状況、感情で特定の精油を示唆する。下記の各精油の詳細については、参考書を参照してほしい(この記事の最後に推奨書籍を示す)。

 

治療期間中

 

ショック:ネロリ(オレンジの花)、ローズ・オットー、イランイラン、クラリー・セージ、パチョリ、プチグレン。

 

怒り:(希釈液の局所塗布とディフューザー)ローマン・カモミール、ジャーマン・カモミール、ラベンダー、ミルラ、マンダリン。

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放射線やけど:(希釈液の局所塗布)キャロットシード、ラベンダー、ムギワラギク。

 

元気とスタミナ:シトラス、スイートオレンジ、メボウキ、ローズマリー・ベルベノン、タイム、スギ、ショウガのすべてを拡散する。

 

うつ病:(希釈液の局所塗布とディフューザー)ラベンダー、ゼラニウム、ローズ・オットー、ローマン・カモミール、スイートオレンジ、グレープフルーツ、乳香。

 

不眠症:(希釈液の局所塗布とディフューザー)ラベンダー、ローマン・カモミール、ジャスミン、マヨラナ、スイートオレンジ、ネロリ。

 

悪臭を放つ傷:(包帯の外部に適用する)レモン、チョウジ、ラベンダー。

(部屋でディフューザーを使用)マツ、コウスイガヤ、レモン、スイートオレンジ。

 

吐き気:(吸息)ペパーミント、ショウガ、スイートフェンネル(患者に好まれる)。

 

創傷(切開)治癒:(希釈液の局所塗布)ラベンダー、ゼラニウム、ミルラ、ムギワラギク、乳香。

 

日和見感染予防:(希釈液の局所塗布とディフューザー)ラベンダー、チャノキ、ユーカリノキ。

 

治療後

 

副腎のサポート:(希釈液の局所塗布とディフューザー)テンジクアオイ、メボウキ、マツ。

 

免疫サポート:(希釈液の局所塗布とディフューザー)ラベンサラ、チャノキ、ラベンダー、スパイク、タイム。

 

リンパ浮腫:(希釈液または圧搾の局所塗布)イトスギ、ムギワラギク、ブルー・カモミール、ノコギリソウ、ジュニパー・ベリー。

 

マッサージ師には、患者ごとに精油の使い方を調べるよう勧める。そうすれば、癌と診断された患者にアロマテラピーを用いるうえで、自分自身の経験的エビデンスを見つけることができる。ただし、患者は医師から治療プロトコルの一部として、マッサージセラピーを受ける正式な許可をもらっている必要がある。

 

推奨書籍

  1. The Aromatherapy Practitioner Manual, Vols I and II, Sylla Sheppard Hanger, Atlantic Institute of Aromatherapy publisher.
  2. The Complete Guide to Aromatherapy, Salvatore Battaglia, second edition, The International Centre of Holistic Aromatherapy publisher.
  3. Essential Oil Safety, 2nd edition, Robert Tisserand and Rodney Young, Churchill Livingstone publisher.

 

参考研究

*Aromatherapy and massage for symptom relief in patients with cancer. Fellowes D1, Barnes K, Wilkinson S. 2004, www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15106172.

** www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1470060/

*** Geraniol, a Component of Plant Essential Oils, Sensitizes Human Colonic Cancer Cells to 5-Fluorouracil Treatment S. CARNESECCHI, K. LANGLEY, F. EXINGER, F. GOSSE, and F. RAUL, November 16, 2001 http://jpet.aspetjournals.org/content/301/2/625.full.pdf.

プロフィール

Shellie Enteen

アロマセラピストとして20年間のキャリアがあり、彼女の会社Carolina Continuing Massage Educationでは、マッサージ継続教育コースと150時間のプロフェッショナル・アロマテラピーのコースを教えている。現在、Greenville Technical Collegeでこのコースをオンラインセミナーへと拡大計画中である。また、National Association for Holistic Aromatherapy(NAHA)理事なども務めている。http://www.astralessence.com/www/