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医道日用綱目の養生法 千葉県鍼灸マッサージ師会学術講習会・元吉正幸氏講演録  第2回 増永静人氏の理論

元吉正幸 

2016.02.28

医道日用綱目(壽保按摩法)と臨床動作法

~千葉県鍼灸マッサージ師会学術講習会・元吉正幸氏講演録~

 

第2回 増永静人氏の理論

千葉県鍼灸マッサージ師会学術部長・元吉正幸 


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2016年2月21日、公益社団法人千葉県鍼灸マッサージ師会にて学術講演会が開催され、同会学術部長・元吉正幸氏が「鍼灸マッサージの科学的に考えた治療技術」と題した講演を行った。講演録第2回目は『医道日用綱目』の壽保按摩法から離れて、経絡指圧を提唱した増永静人氏(医王会)の理論について語られた内容を中心に紹介する。

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 増永静人先生は経絡虚実の意義ということで、肺・大腸系は分解・排泄作用、脾・胃系は消化・発酵作用、心・小腸系は転換・統制作用、胃・膀胱系は精気・清浄作用、心包・三焦経は循環・保護作用、肝・胆経は貯蔵・配分作用と解説しています(増永静人『指圧』医道の日本社)。

 話は脱線しますが、古典的東洋医学は解剖が不正確と西洋医学の目からは見られます。ですが、そうではなく、きちんと臓腑は書かれていて、その生理的観察も素晴らしいものがあります。経絡と臓腑のつながりを観察により発見していたのです。解剖的知識にしても、戦争で大きな負傷をしたとか、あるいは腹を割いてみたという記述もあり、臓器のことはかなりわかっていたのです。あるいは華佗のように手術をした人もいる。臓腑と経絡の関係について、増永静人先生は江戸期天保6年に著された按摩手引や文政10年に著された按腹図解をもとに増永指圧を体系づけたのですが、これはシンプルでわかりやすく、先人の経絡と臓腑の伝統を伝えたいという思いが感じられます。

 肺・大腸系は交換(分解)・排泄。これは当たり前ですよね。空気を交換しているし、排泄する。気という生命的流動性を支配しているということですね。

 亀田医療大学の河野俊彦先生の講義(解剖学)を、私は10回以上聞いているのですが、河野先生によると、人間は直立するという進化を果たして、横隔膜を持ちました。横隔膜と肝臓は実は、立位になると下に下がってしまうから、肝鎌状間膜でつり上げられている。

 横隔膜が呼吸で上下すると、肝臓の重さもあって、腸が押されます。すると、腸の循環が良くなります。もしこれがなくなったら、不健康になります。

 たとえば寝たきりになると、途端に肺炎になったり、あるいは腸の循環が悪くなり、健康が維持できなくなりますよね。ですから、先ほど(第1回の講演録参照:http://ciana.jp/5757)説明した導引のような養生がとても大事になってきます。だからこそ、立位や座位の施術の重要性があるのです。増永先生は座位での指圧や運動法を多く取り入れています。これはとてもいいですね。

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肝・足の厥陰の下肢伸展法(増永静人『指圧』医道の日本社より改変)

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胃・足の陽明の下肢伸展法(増永静人『指圧』医道の日本社より改変)

 

 一方、胃と脾は消化・発酵作用と書かれています。脾は膵臓の機能のようなものだと学校で教わりますよね。胃や膵臓から消化酵素が出たりしているということです。このように機能を把握することは臨床においてとても重要です。

 増永先生の下肢の経絡の見方の図も非常に面白いですね。患者さんもいろいろ状態が異なります。微妙につっぱっている部分が見つかるはずです。この微妙につっぱっているところ(経絡)がわかることが大事です。下肢の緊張のある経絡がわかれば、無理のないところまで伸ばし、ゆるんだらいいなと思うとゆるんできます。つっぱりがゆるんだら、また行けるところまで持っていってゆるませる。これを繰り返します。その結果、最終的につっぱりが残ったところを確認すればいいと思います。この方法はとても良いリラクセーションで、とても気持ちの良いものです。

 さて、増永先生は圧の掛け方についても説明されています。「横臥調整」や経絡のストレッチ「経絡伸展法」も提案されています。その中でも面白いのが、2点圧迫です。

 この2点圧迫については、書かれている本があまりありません。古い本ですが、『スジとツボの健康法』(潮文社)には書かれています。増永先生は京都大学の心理学部出身でしたから、丁寧に筋肉をゆるめると、心につながることがわかっておられた。指圧の圧迫も力任せだと、施術者本人も施術を受ける側も、つらいわけです。それは物質的に押しているだけなのです。2点の押圧は5センチ離れなければ、患者側は2点と認識できません。ですので、まずそのぐらい離します。そして、その2点をずっと押し続けます。すると、筋肉と自分の力がちょうどうまい具合になってきて、トーヌス(緊張)が取れる。1点ではなく、2点であることがちょうどいい重さで加わって、全体的にひびきが線上に感じられてきて、非常にいいわけですよ。

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 2点圧迫(増永静人『スジとツボの健康法』潮文社より改変)

  

   皆さん、ボディワークをやっていますよね。いろいろなボディワークがあります。私は大学でボディワークについての卒論を書きました。ボディワークも目的によって違います。大きく分けると、受動的リラクセーションと能動的リラクセーションがあります。

 うまい鍼灸、うまい指圧、うまいマッサージをするのであれば、能動的リラクセーションができたほうがいいんです。そうでないと筋肉という物体をただ軟らかくするだけのリラクセーションになってしまう。そのことに偏ると、ただ血行を良くしているというマッサージになってしまうわけです。

 ですので、能動的なものも取り入れる必要があります。太極拳なんかは、正しい体を使うのにいいですよね。東洋的フィットネスですよね。あるいはヨーガなんかもいいですよね。今日私がやりますのは、実習の中で増永先生が感じていたことを、今、心理の世界で結構やられている方法です。ジェイコブソンの全身的筋弛緩法といいます。これ自体、まず非常にいいです。しかし、今はそれをさらに発展させて、心理の分野で応用されています。それが臨床動作法なのです。増永先生はたぶん、このことをわかったうえで施術されていた。それが臨床のコツといえるものだったと思います。

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増永静人氏の2点圧迫(増永静人『スジとツボの健康法』潮文社より)

・視覚が邪魔しないよう見つめない。

・相手の腕を軽く支えるように握る。

・術者の両母指を相手の前腕の同じ筋肉に沿って5㎝以上の感覚に並べる。

・前腕で4㎝までが2点弁別できるので、5㎝以上離せば2点を弁別できる。

・指先に力を入れるという感じで押さえていたのを、腰のほうに気を集めて、全身一様に静止した感じ。

・筋トーヌス状態とする(手に鞄を握っている感じ)。

・相手はいつの間にか感じていた2点が1点というか2点弁別とは違う感覚となる。

・線状または面のヒビキに変わる。

 

 

(第3回につづく)

本稿は元吉氏の許可を得て、講演内容に加筆・修正して掲載しています。

【参考図書】

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指圧

ISBN:978-4-7529-3003-7

著者 : 増永静人

仕様 : A5判/344頁

発行年月 : 1974/5/1

http://www.ido-netshopping.com/products/detail1204.html

プロフィール

元吉正幸(もとよし・まさゆき)

1961年、千葉県生まれ。1982年、東京柔道整復学院卒業。1987年、東京衛生学園専門学校卒業。1989年、東京医療専門学校鍼灸教員養成科卒業、八王子で開業。1996年、千葉県勝浦市で元吉接骨院・南風堂鍼灸治療室開業。2001年、放送大学教養学部卒業。2004年、東京福祉教育専門学校卒業。2000年から2012年まで東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科非常勤講師。