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Massage Today 第7回 フレイルな高齢者のための優しい、効果的なタッチとは?

Ann Catlin, LMT, NCTMB, OTR PhD

2016.04.22

フレイルな高齢者のための優しい、効果的なタッチとは?

Ann Catlin, LMT, NCTMB, OTR PhD

訳:編集部

Reprinted with permission from Vol.14, Issue 9(September, 2014)of Massage Today.Massage Today Vol.14, Issue 9(September, 2014)より許諾を受けて、Ann Catlin氏の記事を転載しています。Massage Today公式サイトもご参照ください。 www.massagetoday.com


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 多くのマッサージ・テクニックは痛みを緩和することがわかっているが、足部と下腿のマッサージは、他の種類のマッサージに耐えられない、フレイル(虚弱)な高齢者にとって特に効果的である。足部へのマッサージは非侵襲的であり、抵抗なく受けることができる。つまり、服を脱ぐ必要もないので、マッサージを受けたことがない高齢者の個人的空間と尊厳を考慮できるのである。

 

 私の経験上、ほとんどの高齢者が足部をマッサージすると心地よく感じてくれる。皮膚と皮膚の接触による効果は絶大で、思いやりを示す強力なジェスチャーともなりうる。足部をマッサージすることで、単に仕事を行うケアギバーから、人に仕えるという対人的でダイナミックなシフトが起こるのだ。高齢者への敬意を伝えることもできるだろう。

 

 足部と下腿のマッサージは、痛みそのものの感覚と、個人的な体験に由来する痛みの受け取り方の程度を軽減することができる。足部と下肢のマッサージの一般的なメリットとしては、以下が知られている。

 

・安心感、平穏などの微細な感覚を与える。 

・感情的な緊張を軽減する。

・足部にある反射ポイントを刺激し、身体全体のバランスを整える。

・身体全体のエネルギーの流れを解放する。 

・部位の血行を良くする。

・人から大事にされているという感覚を与える。

 

マッサージをする前に

 患者のことをあれこれ考える前に、自分自身に集中する。施術者が落ちついていれば、タッチの質は強化され、セッションをさらに楽しむことができる。時間がなければ、数秒だけでも構わないだろう。マッサージのセッションを始める前に深呼吸をして、まずは自分自身を整えよう。

 

タッチの質と意図

 すべてのタッチには、質と意図がある。質はタッチの物理的な属性である。たとえば、そのタッチは温かいか冷たいか、強いか軽いか、速いか遅い、周期的か、あるいは散発的か、よく考えて行うべきである。意図とは、施術者がタッチで伝えるべきものである。たとえば、思いやり、人をより良い方向へ導きたい、友人を温かく迎える、などである。特に足部と下腿のマッサージにおいて、タッチの質は以下を用いるとよい。

 

・ゆっくりとしたタッチ。

・周期的なタッチ。

・軽く、最大限接触した圧迫。

・包み込むことを心掛ける。

 

 これらのタッチの意図は、痛みと不快感を緩和し、1対1に集中してもらうことでもある。

 

足部と下肢のマッサージ・プロトコル(手順)

 以下のプロトコル(手順)は、10分間のセッションを想定している。足載せ台付きのリクライニングチェアに座っている高齢者の足部と下腿を左右で5分間ずつ行う。ストロークの時間または反復の数は、患者個人の好みとマッサージに対する反応によって決める。

 

 最初に、マッサージを受ける高齢者には、身体が支えられるような快適な姿勢をとってもらう。上半身を支えるために両腕の下に枕を入れる。リクライニングチェアのカバーを保護するために、足部の下にタオルを敷く。

 

 次に集中したタッチで膝から下腿部へマッサージを開始する。タッチは注意深く行い、目の前の患者に対してマッサージを行う意図を意識する。施術者は精神を鎮め、触れている患者個人に意識を集中する。まずはオイルをつけず流すようなストロークを行い(オイルを塗るのと同じくらいの圧迫で)、膝から下腿へと流し、すべての足部を包む。これを2、3回、繰り返す。

 

 その後は、オイルを用いて、最大限の接触面で揉捏する。このストロークは、施術者の手の平らな面、つまり手掌と手指の平面により小さい円運動を行う。平面を用いることで、圧迫を軽減し、身体や薄い皮膚に対するマッサージの安全性を高めて、快適にさせる。オイルマッサージは遠位から始めて膝まで行う。

 

 足部に対しても、手掌を最大限接触させた揉捏法でマッサージを行う。足背部と足底部に対して揉捏を行う場合は、母指をねかせて行ってもよい。円形のストロークを踵、足底部、母趾球、足指から足関節までの足背部といった足部全面に対して行う。真菌感染のような禁忌がなければ、足指のそれぞれを優しく揉捏する。

 

 それから、逆の下腿と足部で同じシークエンスを繰り返す。両側の下腿と足部をマッサージした後は、身体の両側にバランスをもたらすために、流すような軽いストロークを両側の足に行い、セッションを終える。セッションを終える際、集中したタッチの出発点に戻ることで、施術者は始めたときのように注意深くマッサージを終えることができる。

 

 足部と下腿のマッサージに関する注意点と部位制限は下記となる。

 

・プライバシーに気を配り、高齢者の大腿が露出している場合は布などで覆う。

・炎症を起こした部位をマッサージしない。

・浮腫には、軽くタッチまたはホールドするだけにする。円形のストロークは行わない。

・下肢静脈瘤:ストロークを行わないこと。

・深部静脈血栓症(DVT):影響を受けている部位にマッサージをしないこと。

・真菌感染:足指が変色していたり、爪が黄色または厚くなっていたり、皮膚にひびが入っていたりする場合、接触は避ける。

・褥瘡または糖尿病性潰瘍:踵と足関節で赤みまたは水疱が確認されれば、これらの部位ではマッサージを行わない。

安全なオプション

 上記のような注意すべき条件や部位が存在しても、以下のオプションを行うことで、タッチにより恩恵をもたらすことができる(訳注:病態によっては、行わないほうが無難である)。①患部そのものではなく、その周囲にマッサージを行う。②病態の影響を受けていない部分にマッサージをする。③マッサージをせず、タッチまたはホールドだけにする。

 

 タッチの力を通して、施術者はケアを受ける高齢者のQOLを増やすという意義ある作用に積極的にかかわることができる。またタッチの贈り物は両方向に流れるため、施術者もタッチの相互的恩恵を受けることができるだろう。

 

 

参考動画(英語)

https://www.youtube.com/watch?v=kLu-y-GQlJA

 

プロフィール

Ann Catlin(LMT、OTR)

マッサージ師と作業療法士として介護施設で施術等に従事。高齢者、障害者、死を迎える患者に接して30年以上の経験をを有する。マッサージ師や他の医療者向けにCompassionate Touchトレーニングを提供し、高齢者介護とホスピス組織のコンサルサービスを提供するthe Center for Compassionate Touch LLCの専務取締役も務める。専門向け刊行物やオンライン講座で多数の記事を執筆し、DVD『Sensitive Massage:Reclaiming the Human Touch in Caregiving』も作成している。Annのビジョンは、タッチの形で治癒を行うのが当たり前になり、高齢者、病者、死を迎える人がCompassionate Touch ®に触れることができる世界をつくることである。