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Massage Today 第6回 オーソペディック・マッサージとは? 後篇  

Ben Benjamin, PhD

2016.03.30

オーソペディック・マッサージとは? 後篇

Ben Benjamin, PhD

訳:編集部

Reprinted with permission from Vol.13, Issue 08(August, 2013)of Massage Today. Massage Today Vol.13, Issue 08(August, 2013)より許諾を受けて、Ben Benjamin氏の記事を転載しています。 Massage Today公式サイトもご参照ください。 www.massagetoday.com 


Side view of a male physiotherapist examining man's back in the medical office 

前回の記事)で、オーソペディック・マッサージ(orthopedic massage:整形外科マッサージ)を紹介し、5つの理論的な概念(訳注:「瘢痕組織」、「筋膜」、「靱帯」、「痛みの直接的な原因と間接的な原因」、「関連痛〔放散痛〕」)について解説した。今回の後篇ではオーソペディック・マッサージの評価と治療テクニックを説明する。

 

評価

 評価では詳しい病歴を調べ、整形外科的なテストを行う。病歴などの質問は、原因、重症度、負傷の構造、他の病気との鑑別といった、患者の病態に関する特異的な情報を得ることを目的としている。評価にかかる時間は、検査している身体の領域によって変化する。たとえば背部では、26のテストと一連の触診があり、肩では12のテストを行うことになっている。正確な情報を得るには、各テストを精密で熟練したスキルで行わなければならない。整形外科的なテストは、大きく以下の3種類に分類される。

 

抵抗テスト:特異的な筋・腱を強調させる等尺性運動である。患者は特定の方向に動こうとするのに対し、施術者は等しい反対の力でその運動に抵抗する。それにより筋のみを働かせる。こうして施術者はテストしている組織を分離できる。抵抗テストで感じられる痛みは筋や腱の一部が損傷していることを示す(身体の片側のテストで顕著な虚弱があれば、神経損傷の可能性を示す)。

 

他動的テスト:患者は自力で運動を行わずに、治療家が力を加えることで関節を動かす。患者はぬいぐるみのように、リラックスしたままで、筋や腱に圧力をかけない。このテストの痛みは通常、靭帯、関節、または滑液包の損傷を示す。

 

自動的テスト:患者が自らの力で運動を行う。このテストでは、患者がどの種類の運動が可能か、可能でないかがわかる。

 

 これらのテストでは、患者が筋、腱、靭帯、関節、滑液包を同時に作動させるため、損傷に関して信頼できる情報を与えてくれるわけではない。しかし、これらのテストは、特定のケアの必要がある鋭敏な領域の目安を示してくれる。たとえば、患者がまったく腕を上げることができない場合、肩関節、肩峰下滑液包、または肩の別の組織の損傷を示唆する。

 

 なおテストは、特定の損傷を評価できるか否かで、大きく3つに分けられる。メインのテストは、特定の構造で最も重要な評価となる。このテストが陽性(すなわちテストで痛みが生じる)の場合のみ、損傷は存在することになる。1つの例として、肩の外旋の抵抗は、棘下筋・腱の損傷の主な指標となる。一方、補助的なテストは、すでに識別した損傷に関して、さらに信頼性が高い情報を与える理由で行われる。たとえば、棘下筋の損傷を確認した場合において、他動的な挙上を行った際に痛みがあれば、それは筋ではなく、筋・腱移行部で損傷している可能性がある。マイナーな指標は、特定の損傷が存在する場合のみ陽性となるテストであるため、正確な情報として信頼することはできない。たとえば棘下筋を損傷している場合、たまに痛みを伴う他動的な内旋はマイナー指標となる。

 

治療

 評価した後は、適切な治療法を決定することが重要である。目的は瘢痕組織または筋膜の制限を取り除くことで、患者の力を増強させ、柔軟性を回復・増大させ、機能性を最大限回復させることである。オーソペディック・マッサージではそのために、フリクション・マッサージ、その他の筋膜を狙った施術、マッスルエナジー・テクニック、ポジショナルリリース・テクニック、アクティブリリース・テクニック、トリガーポイント・セラピーなどの治療法を組み合わせて行う。多くの損傷で、瘢痕組織を取り除くのに最も有効なテクニックはフリクション・マッサージである。この治療法を簡潔に説明する。

 

フリクション・マッサージ

 フリクション・マッサージはクロスファイバー・フリクション・マッサージ(横断フリクション)とも呼ばれ、「整形外科学の父」としてよく知られるJames Cyriaxが開発した医療マッサージである。フリクション・マッサージは筋、腱、靭帯のほとんどの損傷を治療するのに非常に効果的である。もちろん、治療家の手が届かない損傷の部位では、この治療を用いることはできず、他の治療法を選ぶ必要がある。

 

 前篇の記事で説明したように、筋、腱、靭帯で微小な断裂が起きると、瘢痕組織が損傷組織を修復するために生じる。多くの場合、雑然とした癒着の基質を形成するため、その結果で生まれる瘢痕は、元の組織よりも組織の完全性と均一性が失われている。

 

 フリクション・マッサージは、適切な治癒を妨げる瘢痕組織を分解するよう作用する。靭帯と骨の癒着を分離して、適切に配置され、可動性を持つ組織の形成も促進する。コラーゲン組織が変性した慢性的な腱損傷において、フリクション・マッサージはコラーゲンの形成を促進する。また、この種の治療は、通常血行が少ない領域で血液供給を増加させる。フリクション・マッサージは損傷部位の傷を軽度に抑制することで治療する。

 

 オーソペディック・マッサージの3つの主要構成要素、理論、評価、治療のうち、礎石となるものは、評価である。患者の痛みを起こすものが何なのかわからない限り、その痛みを緩和することは極めて難しい。その場合は施術が作用する理由や、しない理由を理解するのも難しい。詳細な病歴を調べ、身体的評価を行った後なら、患者を助けられるかどうか理解できるので非常に安心できる。技術が有効でない場合、患者の時間とお金を無駄にすることなく、すぐに適切な医師に紹介する。治療が可能な場合では、自信を持って効果的な治療を行うことができるだろう。

『ニューロマスキュラー・セラピー トリガーポイントリリースを主としたマッサージの実践』(医道の日本社)によると、フリクション・マッサージは筋線維を横断するように、皮膚ごと指先と一緒に動かす手技(肩や手首だけで動かすのではなく、体全体でストロークする)と解説されている。

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ニューロマスキュラー・セラピー トリガーポイントを主としたマッサージの実践
著者:Jocelyn Granger
監訳:大谷素明
仕様:B5判 354頁
発行年:2012年

http://www.ido-netshopping.com/products/detail1959.html

プロフィール

Ben E. BenjaminPhD

教育とスポーツ医学の博士号を持ち、Muscular Therapy Instituteを創設。45年以上にわたる開業歴があり、オーソペディック・マッサージ、アクティブ・アイソレーティッド・ストレッチング、マッサージ倫理に関するトピックスをアメリカ国内で教えている。著書、共著などに『Listen to Your Pain』『Are You Tense?』『Exercise Without Injury』『The Ethics of Touch』がある。オンラインセミナーで世界中のマッサージ師に対して継続教育を提供している。

http://www.benbenjamin.com/