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Massage Today 第5回 オーソペディック・マッサージとは? 前篇 

Ben E. Benjamin(PhD)

2016.03.25

オーソペディック・マッサージとは? 前篇

Ben Benjamin, PhD

訳:編集部

Reprinted with permission from Vol.13, Issue 08(August, 2013)of Massage Today. Massage Today Vol.13, Issue 08(August, 2013)より許諾を受けて、Ben Benjamin氏の記事を転載しています。 Massage Today公式サイトもご参照ください。 www.massagetoday.com 

 

 


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 オーソペディック・マッサージ(orthopedic massage:整形外科マッサージ)は、20世紀前半にJames Cyriax医師の研究で始まった整形外科学を発展させたものである。Cyriaxは手術を必要としない軟部組織損傷を評価・治療する正確な体系を開発した。

 

 「オーソペディック・マッサージ」という用語は、マッサージ教育の第一人者Whitney Lowe(参考記事:「仙腸関節の機能不全とマッサージの役割」が最初に生み出した。この治療法には、他のマッサージとは違い、「理論」、「評価」、「治療」という3つの主要な種類に分類される。今回の記事(前篇)では「理論」について述べ、次回の記事(後篇)で「評価」と「治療」について紹介する。

 

オーソペディック・マッサージの理論

 オーソペディック・マッサージを効果的に行うためには、解剖学、生理学、運動学、身体力学に関する詳細な知識を備えている必要がある。さらに、こらから順番に説明する5つの基本的な概念「瘢痕組織」、「筋膜」、「靱帯」、「痛みの直接的な原因と間接的な原因」、「関連痛(放散痛)」についても理解しておかなければならない。

 

瘢痕組織

 多くの人は、筋肉、腱、靭帯、筋膜、関節の慢性痛のほとんどが、瘢痕組織の不十分な治癒と反復的な損傷が原因であることを理解していない。適切な場所に位置した微細な瘢痕組織は、正常な治癒プロセスの一部である。瘢痕組織は裂けた線維をつなげる接着剤として作用する。しかし、組織がランダムで、雑然とした接着性の基質を形成して治癒する場合、裂傷と痛みが繰り返し続くことになる。

 

 損傷した部位を動かして痛みを感じると、多くの場合、痛みは瘢痕組織を再裂傷した徴候であり、瘢痕組織をさらに形成させてしまう。効果的な治療の秘密は裂傷と再裂傷のサイクルを壊すことである。形成された瘢痕組織を取り除くだけでなく、最大の運動範囲で治癒されるようにすることで、新たな癒着の形成を防がなければならない。

 

筋膜

 細胞、筋紡錘、筋肉、腱、靭帯は、すべて筋膜で包まれている。筋膜による制限はあらゆる損傷、悪い姿勢、運動習慣で生じ、将来、痛みと損傷を引き起こしやすくする。したがって、痛みの原因が筋膜によるものかどうかを識別して、効果的に治療する能力は、オーソペディック・マッサージ施術者にとって重要である。

 

靱帯

 靭帯は適切な配置で骨をつなげるためにきつくなっており、痛める方向への運動を制限しているとされる。これらの構造にはわずかながら柔軟性がある。靭帯が異常にゆるんでいるとき、関節の健全性を失う。そうなると、靭帯に依存している骨は揺れ動き、不安定になり、損傷しやすくなる。靭帯は遺伝的因子で弛緩している場合がある。靭帯は、事故で突然弛緩する場合もある。靭帯は悪い姿勢や過去の損傷による古い瘢痕組織の伸張で、時間とともにゆっくり拡張する場合がある。

 

 靱帯の弛緩が遺伝的因子に起因する場合、熟練した施術者は患者に関節の過伸展を避けるように助言し、良いアライメントと姿勢になるよう施術を行う。これにより身体の状態を強く保てるようにする。靱帯の弛緩が事故や損傷で生じた瘢痕組織に起因する場合、治療家はこの起因する組織を探し、除去または減弱させる治療を提案して、今後の損傷を予防する。そのような治療例としては、フリクション・マッサージ、筋膜への施術、ストレッチ、フィットネス・トレーニング、マッサージ、注射療法などがある。

 

痛みの直接的な原因と間接的な原因

 治療の総合的な計画は、患者の痛みの直接的な原因だけでなく、あらゆる間接的な原因も対象にしなければならない。痛みの直接的な原因は、腱の問題、滑液包炎、神経などを圧迫している椎間板といった身体的損傷である。その問題を緩和すると、痛みは消える。痛みの間接的な原因は、人が損傷しやすくなる寄与因子である。たとえば、過剰な胸椎後弯は、この運動の最後の15度は胸郭で生じるため、負荷をかけずに腕を挙上するのが難しくなる。胸椎後弯症の病態は肩の腱が捻挫する間接的な原因となるかもしれない。同様に、若いスポーツ選手で膝と足部のアライメントが悪いと足関節捻挫の間接的な原因となる可能性がある。アライメントを改善するだけでは損傷は消えないが、足関節の治療後、アライメントを改善することが将来の損傷を防ぐことにつながる。

 

関連痛(放散痛)

 関連痛(訳注:原文が「Referred Pain」となっているため「関連痛」と訳したが、関連痛というとトリガーポイントを連想させる。しかし、ここではトリガーポイントとの関連よりは、「放散痛」に近い意味にとらえたほうが適切と思われる)は痛みの根源から離れて感じられる痛みである。たとえば頚部の損傷による痛みが肩、あるいは肩から手までの間で感じられたり、腰の損傷の痛みが大腿や下腿で感じられたりする。関連痛の原因がどこであろうとも、4つの基本的なガイドラインに適合する。

 

1.痛みは遠位に起こる。損傷は正中線から末端部までで痛みを起こすが、その反対は起こらない。たとえば、肩の損傷は前腕で痛みが生じるかもしれないが、手関節の損傷は肩で痛みを生じない。

 

2.関連痛は正中線を横切らない。たとえば腰の右側の損傷は、右側の殿部と脚で痛みを生じるが、左側の殿部と脚では生じない。患者が腰の片側から逆側に痛みが移動したと報告するなら、両側で損傷していることになる。

 

3.痛みはデルマトーム(皮膚分節)内で生じる。各脊髄神経は身体の特異的な部位を支配する。これらのデルマトームの1つで感じる関連痛は支配神経の圧迫で生じることがある。しかし、痛みの起源が別のデルマトーム領域の傷ついた筋、腱、靭帯、筋膜に由来することはよくある。関連痛のパターンが傷ついた神経、あるいは他の軟部組織から来ているのか決めるのは整形外科的評価の主な仕事の一つである。

 

4.損傷の重症度は、関連痛の距離に正比例する。たとえば、重篤な頚部の損傷は手に関連痛が生じる。それより軽度の損傷の場合は前腕で関連痛が生じる。

 

 関連痛は多くの医療者を混乱させる。しかし、特定の損傷における関連痛の特異的なパターンを学べば、混乱はすぐに消える。たとえば骨盤の仙結節靭帯は大腿部と下腿の後面と踵に関連痛を生じさせ、中殿筋は下腿外側で関連痛を生じさせる。C7の横突間靭帯は下位の頚部の片側から肩甲骨の内側縁で関連痛を生じさせる。

 

 これらの5つが合わさった基本原理は、オーソペディック・マッサージの評価と治療の手引きとなる。後篇ではこの評価と治療について説明する。

(後篇の記事はこちらをご参照ください)

プロフィール

Ben E. BenjaminPhD

教育とスポーツ医学の博士号を持ち、Muscular Therapy Instituteを創設。45年以上にわたる開業歴があり、オーソペディック・マッサージ、アクティブ・アイソレーティッド・ストレッチング、マッサージ倫理に関するトピックスをアメリカ国内で教えている。著書、共著などに『Listen to Your Pain』『Are You Tense?』『Exercise Without Injury』『The Ethics of Touch』がある。オンラインセミナーで世界中のマッサージ師に対して継続教育を提供している。

http://www.benbenjamin.com/