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Massage Today 第3回 車椅子患者に対する施術について考える

Sharon Puszko, PhD, LMT

2016.01.28

車椅子患者に対する施術について考える

Sharon Puszko, PhD, LMT

訳:編集部

Reprinted with permission from Vol.14, Issue 08(August, 2014)of Massage Today. Massage Today Vol.14, Issue 08(August, 2014)より許諾を受けて、Sharon Puszko氏の記事を転載しています。 Massage Today公式サイトもご参照ください。 www.massagetoday.com


米国では170万人以上もの人々が車椅子とシニアカーを使って生活しています。現在、これらの人々のほとんどが65歳以上です。これが意味するのは、彼らにマッサージを行う場合、高齢患者への施術法や可動性に問題のあるクライアントに関する特定の知識が必要となるということです。

Elderly woman in wheelchair

 

共通の問題

車椅子使用者は肘関節、手関節、手掌に負担を抱えています。最も損傷しやすい部位は肩です。回旋筋腱板(ローテーター・カフ)の裂傷と腱炎は多くの場合、肩関節痛の原因となります。酷使による筋の不均衡はバイオメカニクス異常、そして障害につながります。回旋筋腱板の裂傷や腱炎に関連する力の不均衡で最もよく見られるのは、肩関節の内旋筋と外旋筋の不均衡です。また、手動式車椅子の使用者が手根管症候群に罹患する率は49~73%と言われています。

 

手動式車椅子の使用者にとっては、車椅子の適切なポジショニングが、反復する負荷を防ぐのに最も重要となるでしょう。一部の車椅子使用者には、手動と電動を併用した車椅子が実行可能な妥協点かもしれません。最新の手動式車椅子は、電動式車椅子よりも扱うのがずっと楽です。しかし、腕や肩の慢性痛に苦しむ車椅子使用者がみな、手動式車椅子を使用できるとは限りません。

 

多くの車椅子使用者は足部痛にも苦しんでいます。人は立って歩くことで、脚の背面を走るアキレス腱を伸ばすことができます。車椅子を用いる多くの人は足関節が底屈ぎみになり、アキレス腱が短縮しています。アキレス腱により底屈位に引かれ続けると、進行するにつれて、大きな痛みを伴うようになります。底屈位の継続は踵から足指を接地する通常歩行の感覚を損なってしまうため、脳卒中後の歩行の再学習もさらに難しくさせます。

 

ですので、車椅子の患者に対しては、足部のマッサージが欠かせません。痛みを緩和するのに役立ちます。他動的に足部を背屈させ、腓腹筋を伸ばすとよいでしょう。

 

「マッサージは疼痛管理に有用な方法と考えられますが、疼痛を治療すること自体が目的ではありません」とJames Laskin(MS、PT 、オクラホマ大学・オクラホマシティ公共医療センターリハビリテーション・サービス部門非常勤講師)は言います。Laskinは症状だけではなく、問題を治療する重要性を強調しています。

 

褥瘡

車椅子での生活が長くなると、褥瘡(床ずれ)を発症することがあります。一定期間体圧がかかると、これらの病変は起こり、軟部組織を破壊します。骨と座る面の間の圧力が殿部の軟部組織を圧迫し、組織から血液を押し出します。圧がかかっている部分を変えずに長く座るほど、細胞へのダメージは大きくなります。歩ける人でも、長い時間硬い表面に座ると、似たような状態が起こります。しかし、動ける人の場合は、潜在意識にある神経系が定期的に我々を動かし、圧力ポイントを移して、圧迫された組織に血液を再び入れるようにします。脊髄が損傷した患者では、このプロセスに不可欠な感覚を失わせてしまいます。

 

さらに四肢麻痺患者のほとんどは軟部組織に感覚がありません。彼らは苦痛を感じず、定期的に動けないために、褥瘡を発症します。車椅子生活の人は約10分ごとに姿勢を変え、「圧力解放」を行い、軟部組織に血液を流すように医師とセラピストから勧められます。こうすることで高い圧力がかかった組織に血液を流して再び栄養分を与えることができます。こういった患者には、尾骨、坐骨(骨盤)、腰部へのマッサージが褥瘡予防に役立ちます。

 

現在の最高の緩衝材(クッション)技術があっても、褥瘡は大きな健康リスクの1つになっています。褥瘡は生活の質(QOL)を急激に低下させます。腹臥位で寝ながら、褥瘡を治すのに数週間から数カ月かかることもあります。皮膚移植が必要になることもあります。深い褥瘡は致命的な骨の感染症になる可能性があり、生産的で自立した人を長期間他人に頼る寝たきり患者に変えてしまいます。

 

また、車椅子生活の患者に対しては、可動域の改善、血行促進を目的とした手技を行いましょう。これらの治療法は介護施設で入居者に施術を行うマッサージセラピストに特に重要になるはずです。

プロフィール

Sharon Puszko, PhD, LMT

Day-Break Geriatric Massage Instituteのオーナー兼教育者。

連絡はspuszko@juno.comまたはPuszkoのウェブサイトwww.daybreak-massage.comまで。