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筋膜への手技はなぜ効果があるのか?

Til Luchau

2015.12.24

筋膜への手技はなぜ効果があるのか?

~ティル・ルカウ『ビジュアルで学ぶ 筋膜リリーステクニック Vol.1  ―肩、骨盤、下肢・足部―』より  


『ビジュアルで学ぶ 筋膜リリーステクニック Vol.1  ―肩、骨盤、下肢・足部―』 著:Til Luchau(ティル・ルカウ) 監訳:齋藤昭彦(杏林大学保健学部理学療法学科教授) 定価:本体4,200円+税 B5判 214頁 発行:医道の日本社 (2016年1月下旬発行予定)

『ビジュアルで学ぶ 筋膜リリーステクニック Vol.1  ―肩、骨盤、下肢・足部―』
著:Til Luchau(ティル・ルカウ)
監訳:齋藤昭彦(杏林大学保健学部理学療法学科教授)
定価:本体4,200円+税
B5判 214頁
発行:医道の日本社
(2016年1月下旬発行予定)

身体の各器官や身体全体を包む、膜状の結合組織である「筋膜」。鍼灸マッサージ師をはじめとする治療家の間で、その筋膜への関心が近年高まってきています。

筋膜の役割はどんなもので、どのような治療が効果的なのでしょうか?

『ビジュアルで学ぶ 筋膜リリーステクニック Vol.1  ―肩、骨盤、下肢・足部―』(著:ティル・ルカウ)から一部、抜粋したいと思います。

* * * * *

身体で最も大量にある組織は何だろうか? 「骨」と言っただろうか? よい勘である。何と言っても骨は約206本ある。あるいは「筋肉」と答えた人もいるかもしれない。この答えもありだろう。数える人によって、600~800もの名前がついた筋肉がある。しかし、骨や筋肉よりも、ずっと大量にあるのは「筋膜」である。筋膜は、骨と筋、ならびに臓器、血管、神経を囲み、つなげ、包んでいる膜性結合組織である。そのため、何百または何千もの筋膜がありながらも、「筋膜は一つしかない」と表現することもできる。

筋膜については、広く知られている。筋膜の新しい科学に関する学術会議、学術研究、雑誌記事、テレビの特別番組、エクササイズ、自己啓発書は増え続けている。筋膜の理論は、カイロプラクティック、鍼治療、オステオパシー、スポーツコンディショニング、ヨガ、そしてもちろん、マッサージとマニュアルセラピーにかなり影響を及ぼしているといえる。その証拠の一つとして、筋膜や筋筋膜のアプローチに焦点を合わせた治療法、メディア、マニュアル、セミナー(私の上級筋膜テクニック・シリーズも)が絶えず増大していることが挙げられる。

その一方で、筋膜の名声はまだ新しいものだ。筋膜の重要性の支持者については、Andrew Taylor Still(1828~1917年、オステオパシーの創始者)とIda P. Rolf(1898~1979年、ロルフィングの創設者)にまで遡るが、2人が筋膜の存在を強調したのは異例のことだった。比較的最近まで、筋膜は使い捨ての組織として、解剖切開や解剖イラストで除去したり、破棄したりするような白っぽい「梱包材」に過ぎないと考えられていた。しかし、筋膜の考え方は著しく変化を遂げた。驚くべきことに、1970年から2010年の間で、学術誌での筋膜に関する査読論文の年間掲載数は約5倍に増えたのである。

システム的思考

システム的、全身の統合者としての、筋膜に対する最近の興味は、複雑性、相互接続、システム全体の理解における大きな文化的変化と一致している。物理学において、この考え方の変化はアインシュタインにまで遡ることができ、彼の革命的な相対性理論はニュートン力学の因果的、部分的な思想に置き換わった。それから段階的に、特にこの20年で、経済学、環境科学、戦争、多国間貿易、脳科学、気象学・気候研究、組織心理学、企業経営、家族療法、栄養学、医学といった多様な分野で、システム全体の理解という重要なパラダイムにより、根本的見直しが行われてきた。

加えて、我々は、20年前よりもさらに複雑で相互に関連しあった時代に生きている。インターネットの出現は、いかに複雑で、広く分布するシステム(これは、ある意味で相互接続した筋膜ネットワークに似ている)が複雑性の理解を変えたかを示す、わかりやすい例である。控えめに言っても、インターネットが日常の相互接続に関する考えを大きく変えてしまった。その結果、50年、いや20年前に比べても、我々は、「システムは各部分の合計より大きくなる」という考えに集合的に一層慣れ親しんでいる。回復性と柔軟性は高い相互接続性から生じる。小さな個々の変化は時に予測不可能な形で大きな効果を生む。原因と結果は、必ずしも線形とは限らない。相互関連性に関する我々の考え方が変化して、遍在性と相互関連性という筋膜のユニークな特性が、整形外科やマニュアルセラピーの世界で受け入れられるようになったのは偶然ではないのだろう。

筋膜とは何か?

筋膜(fascia、ラテン語の「帯」に由来)という用語は一般に、筋肉、腱、骨、血管、臓器、神経を覆い、つなげ、包んでいる線維性結合組織を意味する。筋膜は高密度なものから、ゆるいもの、非常に規則的なものから、不規則なものまで多くの亜型がある。学会は、正確にはどの組織を正当な筋膜とみなすのか、いまだに議論中である。しかし、研究者は議論しているすべての組織は、割合と配置は異なるものの、同じ基本的要素で構成され(線維、細胞、細胞外基質、細胞質基質)、相互接続していることに基本的に同意している。筋膜研究者のRobert Schleipと彼の共同研究者らは、一般に受け入れられている筋膜の定義を述べている。筋膜とは「人体に広がる結合組織の軟部組織要素」だと彼らは言う。この広い定義は、包んでいる膜だけでなく、関節包、腱膜、靭帯、腱も含む。本書の説明では、この幅広い解釈を使用する。

筋筋膜

それでは「筋筋膜(myofascia)」とは何なのだろうか? 

厳密に言うなら、筋筋膜は、骨格筋に関連した筋膜結合組織、つまり、骨格筋の内部にある筋膜組織、外部の被覆、中隔、結合を指す(“myo”は筋肉を意味する)。略式的に、筋筋膜は筋膜と同義的なものとしてよく使われる(ほとんどの定義で挙げている筋膜の多くは筋肉とは直接関係がないが)。

私のセミナーでは「筋膜テクニック」という用語を自動的、または「筋」要素のアプローチも含めて使っている。私の手技の多くは、患者の自動運動を以下の目的で使用する。

1.他動的にアクセスするのが困難な層と組織に可動性を持たせて、分化する。

2.患者に施術の強度を調整させる。

3.施術者の手により、患者が新しい方法で動くことで、神経筋の動作パターンを練習させる。

筋膜の変動 

筋膜には、とりわけ徒手施術に関連するいくつかの特性がある。それらは以下の3つである。

1.連続性

2.可塑性

3.感受性

これらの特性は有益な面と有害な面がある。これらの特性を順番に説明していき、各特性を利用する手技を記載する。

本書では、付加的な筋膜手技をさらに詳しく解説する。

【新刊情報】

『ビジュアルで学ぶ 筋膜リリーステクニック Vol.1  ―肩、骨盤、下肢・足部―』

著:Til Luchau(ティル・ルカウ)
監訳:齋藤昭彦(杏林大学保健学部理学療法学科教授)
定価:本体4,200円+税
B5判 214頁
発行:医道の日本社

プロフィール

Til Luchau(ティル・ルカウ) 
Advanced-Trainings.comの主任インストラクター兼ディレクター、アドバンス・ロルファー。Rolf Instituteやナローパ大学ソマティック心理学などで指導者・教育者として活躍。現在は、プロを指導するインストラクターとして、書籍の執筆や専門誌への論文の寄稿なども行い、幅広く活動している。